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#4 ページ18

着替え終えた私は神谷コーチの元に向かった。

「それください」

「お前はこっち」

コーチが食べていたものが美味しそうに感じて、ちゃっかりもらおうとするとコーチの手で阻止される。

激しい運動の前後に消化が遅れるものは適していないけれど、純粋に欲していたものを拒まれるのは身体が悲しむのに。

仕方なく言うことを聞き、差し出された方を摘んだ。

「フリー、ひとまず完成して一安心だな」

食べている手を止めないままコーチが言う。

「はい。ジスランにも見ていただけたのでだいぶ良い感じに仕上がったかなあと」

フリーも、ショーで演じたプログラム同様にピアノ曲だ。ピアノが好きだから、というのもあるけれど、私に合っているのだと思う。


今回フリーは、神谷コーチと賢二さんお2人の選曲だ。

今までは好き勝手滑っていたから、自分の好きな曲や滑りやすい曲を選んでいたけれど、競技用ということもあって、私のことをよく知ってくださっている方達に選曲してもらった。

ちなみにショートは茅知さんの選曲だ。

「それはそうと、羽生さんと何話してたんですか」

本人がいないことを目視しつつ、コーチに尋ねた。
私の知らないところでどんな話をしたのか、正直気になる。

「あぁ、別に大したことじゃねえけど」

「例えば?」

「んー、ショーできちんと挨拶できていなかったので、って」

おぉ、礼儀が正しい人に思える。

「あとは……ジスランとか賢二との関係性を根掘り葉掘り、かな」

「根掘り葉掘り?」

「何かうまーく聞かれた気がする。俺お前のこととか変なことまでうっかり話してねえよなあ」

数分前のできごとであろう会話を思い出し、コーチは唸った。


結局羽生さんは、何か聞きたいことをコーチから聞き出せたのだろうか。
頭の片隅でそんなことを考えながら、糖分補給に区切りをつけた。

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作者名:たこやき | 作成日時:2022年9月18日 20時

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