猫は嫌いじゃないけれど (ページ3)

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#さんページ3

「お前観に来る？いつもと時間帯違うけど」

「んー、人の目につくし、寒いし、遠慮しておきます」

「ふーん。了解」

あくまで帰る支度をしながら、そう返事した。

別に見てほしいという訳でもなかったから、特にそれ以上踏み込みはしなかった。

「練習風景ならたまに特等席で観させてもらえますし〜」

「たまーにな。普段は寒くない別室とか外にいるじゃん」

「いや〜スケート場にも寒くない部屋が存在するのがありがたい」

「今8月だもん。冬は覚悟しとけよ」

猫と会話しつつ荷物をまとめると、「じゃ、一旦上着預かるね〜」と、寒くならないよう猫にかけていた上着を手にする。

そして、丸まったまま動かないその生物をひょいっと拾い上げ、持っていた上着で軽くそれをくるみ片手で抱えると、空いている片手でスーツケースを転がしながらそのままリンクを後にした。

「あの〜、いつも思うんですけど何で自分は隠されるのでしょう？」

上着の中でそう呟く猫の声は聞こえないフリをして、「ありがとうございました〜」とリンクのスタッフさんに声掛けをする。

堂々と猫をリンクに出入りさせるなんて気が引ける、ただそう思っただけだ。

外に出てから上着を広げ、地面に降ろす。

解放された猫は、にゃあ、とだけ鳴いて彼と別れた。

猫が駆け足気味で離れていくのを見送った彼は、特に何事もなかったかのように、いつも通りの帰り道を歩いた。