猫は嫌いじゃないけれど (ページ2)

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「今日も降りれなかったのかいな」

「うるさいなあ。降りるために練習してんだっつうの」

「ていうか聞いてるかぎり4回転半なんて現実的じゃあないっすよね〜」

「それをやろうとしてるんだよ俺は。アクセルは王様のジャンプなんだってば」

「それ、もう聞き飽きたので口じゃなく手を動かしてもらってもよろしい？」

「同じ話くらい聞いてくれてもいいじゃん。もう撫でてやんねぇぞ〜」

と言いつつ、彼は撫でるのだ。
撫でること自体心地いいし、撫でているときの猫の様子は可愛らしい。

彼、羽生結弦は猫が好きだ。猫に甘い。

今日もリンクにやってきた猫を撫で、癒し癒されながら、練習を引き上げる。

猫も猫とて、寒いリンクには長時間いられない。
8月の夜は外もまだまだ気温が高く蒸し暑い。

寒さが苦手な猫にとっては、外の方が断然過ごしやすかった。

「あ、今度昼間に貸切とったって言ったっけ」

「聞きましたよ〜。報道の方が何人も来る上に羽生氏が練習しているところを生配信するとかナントカ」

「そうそれ」

その配信は“SharePractice”と名付けられ、結果的には日本時間の平日昼間にも関わらず、同時視聴最大10万人以上という異次元の数字を叩き出すことになるのだが、このときの彼と1匹はまだ知る由もない。