【番外編】実写の人1 ページ23
「にゃー」
鈴のような声で鳴く猫は私があげる餌を目当てにやってくる。
ついこの間、たまたま持っていた刺身の切れ端をあげたらうれしそうに食べてくれたのだ。
私の手から餌を食べる猫はぴくっと耳を動かし、後ろを振り向く。
踵を返し駆け寄った先にいた人は短髪の眼鏡をかけた壮年だった。
近づいた猫に私があげていた餌とは違う、高級感のあるものを男は与える。
「とても懐かれているんですね」
声をかけた私に、彼は顔を上げ自身ありげに話した。
「僕が誰だかわかるかい」
整った顔をしているから芸能界の方なのか、才能ある空気を感じるから有名な著名人か技術者か…並の人間の雰囲気ではない。
「すみません、有名な方でしたか?
そういう情報には疎いもので…」
「僕は…
三次元では三浦春馬だ」
「伊藤鴨太郎さんですね」
場所を移動して縁側。
三次元では三浦春馬な鴨太郎さんは猫をやさしく包むように撫でている。
まさか目の前の人が有名なドラマに出た人気俳優でもなく、プロフェッショナルや微熱大陸的なドキュメンタリー番組にでてた人でもなく、ニュースで御用になった人だなんて…
でも今は見た限りでは悪名を残すような人相には見えないが、彼もこの前出会った異三郎さんのように自分の中にある一般にはわからない意志があったのだろうか。
「僕は最期の頃に高杉晋助と協力関係にあってね
共に真選組を壊滅させようと企んでいたんだ」
未遂に終わったがね。
そう話す鴨太郎さんの表情は暗いものではなかった。
辛く苦しい思い出ではなく、懐かしいころを思い出しているだけのような表情だった。
「彼に見透かされていたんだ。
僕が一番求めていたものは仲間だと。…その通りだったよ」
認めてもらえないのを誰かのせいにした。
自己顕示欲だけが強くなっていく人生だった。
本当に欲しいものが何かをわからないふりをして。
「でも最後に近藤さんは…真線組の彼らは僕を繋いでくれたよ。
どんなに遠くでも決して切れない絆(いと)で」
昔を懐かしむ表情だった。友達とケンカして、仲直りすればみんなで笑いあった。そんな子供の頃を思い出しているような。
「真線組(かれら)なら、あの白い布にそれぞれが思い思いに描いた御旗は、これからのどんな試練も越えていける。そんな気がするよ」
遠くに離れていても魂は真線組の隣にいる彼を見てAはふふっと笑った
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ポテト(プロフ) - とても素晴らしい作品でした。作っていただきありがとうございます。 (2022年8月2日 1時) (レス) @page35 id: becea61854 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - みーこさん» 中学生はとても感情が複雑でそれに受験が重なると苦しいことが多いかもしれませんがあまり気負わずご自身が出せる力を出して自分に合った場所を探せるといいなと思います。疲れたらいつでもひまわりの彼女に会いにきてくださいね! (2020年11月2日 0時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - みーこさん» たくさんの作品にたくさん感動していた側の自分が新しく作品を作りあの頃の私のように感動してくださる方がいらっしゃるのはとても感慨深いです。 (2020年11月2日 0時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - みーこさん» 愛情こもったコメントありがとうございます。嬉しすぎて泣いてしまいました。私もみーこさんのように読み漁っていた時期があり一通り読んだ後にもっとあんな設定でこんな文章の作品が読みたいと考えるようになったのがこの小説の執筆を始めたきっかけです。 (2020年11月2日 0時) (レス) id: 186341d011 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ - やっぱり素晴らしいですね。花言葉のエモさを理解したし、色んなことを教わった作品。ボロ泣きした夢小説は少ないんですけど、そのひとつでした。今どうかはわかりませんが、この作品は永遠に不滅だと思ってます。銀魂が終わってもまた、訪れさせていただきます。 (2020年10月28日 21時) (レス) id: 322bb6492e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴 | 作成日時:2018年8月14日 23時