vol.8 ページ8
side:kei
静かな朝が過ぎ、暖かい昼も過ぎ。
ひゅうひゅうと少し冷たい風が窓を揺らす、日も暮れかけた夕方。
家族の面会ももうお昼に終わり、暇を持て余していた俺の病室に、どたばだと足音が聞こえてきた。
「伊野ちゃん!」
大きな音を立ててドアを開け、同じくらい大きな声で俺の名前を呼んだ一人の青年。
スーツに身を包み、走ってきたせいか髪は乱れている。
「大ちゃん。病院は静かに、ね?」
「へへ、いやー、面会終わっちゃう!って思ってさ!」
大ちゃんが来ると、病室はいつも少し明るくなったように感じる。
それはきっと、彼が明るいからなんだろうけど。
「仕事は最近どう?」
「うーん……まぁまぁかな。やっと最近仕事にも慣れてきて。
でも新人だからってミスして許してもらえるような甘いもんじゃないし……大変だよ。」
「へぇ……そうなんだ。」
大変だ、って肩を落とすけど、俺はそれが羨ましいよ。
俺だって、大ちゃんみたいに仕事が大変だって愚痴を言ってみたい。
失敗して怒られて、同僚にドンマイ、なんて声を掛けてもらったり、締め切りに追われて残業、なんてのも経験してみたい。
「伊野ちゃんは体調、どう?」
「あ、そうそう!最近体調いいからね、今度お花見しようって言ってもらったんだ!久しぶりに外に出れるよ!」
「おお!よかったじゃん!最近は桜も綺麗に咲いてて見頃だしね〜!」
まぁでも、伊野ちゃんは花より団子なんだろうけど!なんて笑う大ちゃんは少し眩しすぎて。
なんだよそれ!って笑って見せるけど、心は晴れない。
なんだか、俺だけ置いて行かれたような気がして。
俺だけ、時間が止まっているような気がして。
大ちゃんの時間は進んでて、ちゃんとこの今を一生懸命生きているのに。
俺の時間は止まったままで、生きているはずなのに置いてけぼりだ。
「それでね、ほんと、俺ミスばっかしちゃってさぁ!もう怒られまくりだよ!
……って、伊野ちゃん?聞いてる?」
「へ?……あ、ごめん聞いてなかった。何の話?」
ぼーっとしてたら大ちゃんに顔を覗き込まれて、ハッとする。
ああ、駄目だ。夜はネガティブになりやすいから嫌いだな。
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天凪(プロフ) - サクラさん» このような形になってしまい、本当にすみません…!これからも頑張りますので応援よろしくお願いします! (2017年3月6日 8時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - そうだったんですねぇ、これからも頑張って下さい!! (2017年3月5日 19時) (レス) id: d7def24883 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 萌伽さん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません!これからも頑張ります。温かい応援よろしくお願いします! (2017年3月5日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
萌伽(プロフ) - とても面白いです!! こんな文章かけていいなと思います、 これからも更新頑張ってください! (2016年10月3日 9時) (レス) id: 4cef1c3763 (このIDを非表示/違反報告)
乃海(プロフ) - Jokerさん» ありがとうございます!頑張ります〜!<(_ _)> (2016年4月3日 10時) (レス) id: 99f0b4f5e8 (このIDを非表示/違反報告)
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