vol.6 ページ6
side:薮
その日の午後。
俺はとある場所を訪れていた。
「お邪魔しまーす。」
中に入ると、絵の具の匂いがした。
「あれ、珍しく早かったじゃん。」
「珍しくは余計だよ。」
ははは、ごめん。と彼は笑った。
部屋の中は陽の光が入り込んでいてとても明るかった。
「待ってて、お茶いれるから。」
そう言って彼は作業を中断し、キッチンの方へと行ってしまった。
目の前には、彼が今まで絵を描いていたキャンバスがあった。
まだ完成とはいえない絵。
しかしその絵は、未完成でも充分綺麗だった。
「なぁ光。」
絵を見ながら友人の名前を呼んだ。
彼の名前は八乙女光。
俺と同い年で何でも話せる唯一の親友。
「ん?」
「いや…何でもない。」
「何それ、変なの。」
彼は画家をしている。
画家なんて並大抵の技量では職業にできないが、彼は違った。
才能、個性、技量。
全てにおいて完璧だった。
「あ、そうだ薮。」
「何?」
光は最近ハマっているのだというハーブティーをカップに注いだ。
ハーブの良い香りが心を落ち着かせてくれた。
「俺さ、個展開くことになったんだ。」
ズキ、と心が痛むような気がした。
……俺、最低だ。
親友の朗報を素直に喜ぶこともできないなんて。
「…そっか……個展、いつから?」
「明日からだよ。」
「へぇ……すごいじゃん。」
先ほどのキャンバスに目を向ける。
それを一言で表現することは出来なかった。
しかし言葉にできない何かが湧きあがるのを感じた。
それは光だからこそ、描けた作品。
逆に言えば彼にしか描けない作品だった。
彼の今までの人生経験や、心の中に秘めているもの。
その全てが、絵に表現されていた。
『才能』
俺を苦しめるには充分すぎる言葉。
「今度、見に行くよ。」
「本当に?ありがとう。」
個展を開いている場所を聞いて、忘れないようにスマホのメモに保存する。
そして彼に勧められ、ハーブティーを口にする。
陽の光を浴びてキラキラと輝くハーブティー。
色は澄んでいて、とても綺麗だった。
すっきりとした味わい。
不思議と心が落ち着く気がした。
「どう?」
「うん、おいしい。」
「良かった。リフレッシュ効果があるみたいでさ、俺も休憩する時によく飲んだりしてるんだ。」
へぇ、と納得すれば彼は満足そうに笑った。
その笑顔が少し眩しいように感じた。
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天凪(プロフ) - サクラさん» このような形になってしまい、本当にすみません…!これからも頑張りますので応援よろしくお願いします! (2017年3月6日 8時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - そうだったんですねぇ、これからも頑張って下さい!! (2017年3月5日 19時) (レス) id: d7def24883 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 萌伽さん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません!これからも頑張ります。温かい応援よろしくお願いします! (2017年3月5日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
萌伽(プロフ) - とても面白いです!! こんな文章かけていいなと思います、 これからも更新頑張ってください! (2016年10月3日 9時) (レス) id: 4cef1c3763 (このIDを非表示/違反報告)
乃海(プロフ) - Jokerさん» ありがとうございます!頑張ります〜!<(_ _)> (2016年4月3日 10時) (レス) id: 99f0b4f5e8 (このIDを非表示/違反報告)
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