vol.5 ページ5
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「伊野尾くん、起きてるー?……って、またブログ見てるの?」
「うん、また投稿されててさ〜!」
朝食を持った高木が病室に入ってきた。
へへ、と笑ってスマホの画面を見せてやると、ほんとだ、と高木も笑った。
「fineさんっていい名前だよね〜!ファイン、って言葉通り元気な人なのかな?」
「んー……そうかもね。ほら、伊野尾くんご飯だよ?」
「やったー!腹減った〜!
ねえ高木……せんせー、空、綺麗だね。」
少し開いている窓の隙間から、暖かい風が入ってカーテンを揺らす。
そっか、もう4月か。そういえば病院の外の桜咲いてたなぁ。
「……そーだね、伊野尾くん最近調子いいから、今度お花見でもしようか。」
「マジで!?やった〜!」
「でもそれまでは安静にしててね?体調崩しちゃったら行けないんだから。」
「……はぁい。」
騒ぐ俺を笑顔で制止する高木。
間延びした返事を返し、ゆっくり起き上がって手を合わせる。
「いただきまーす!」
「食欲は旺盛だよね……。」
「育ち盛りなんですー!」
病院食は不味い、って噂はよく聞くけど
俺には白米さえあれば不味くても生きていける。
なんて前に高木に言ったら、バランスよく食べなさいって怒られたけど。
「ねぇ高木……せんせい、暇。」
「とりあえずご飯食べなよ。また後で来るからね。」
「えー……。」
苦笑いしながら、高木は病室を出て行った。
静かになった病室が、なんだかさっきより冷たく感じた。
カーテンは相変わらず春の風に揺られている。
暖かいはずなのに、それすらも冷たく感じて、窓を閉めた。
ひとりで食べる朝ごはんは、やっぱ美味しくなくて。
もう慣れたはずなのに、やっぱり寂しいって気持ちは拭いきれない。
「面会まであと2時間もあるのかよ……はぁ。」
せめて一般病室が良かったなぁ、とため息をつく。
面会に来るのは家族と数少ない友達ぐらいだし、個室だから隣の患者さんとおしゃべり、なんてのもできない。
人との交流が少なくて、だから高木とはこんなに仲良くなった。
『皆さんも元気が出ますように!』
fineさんのブログに載せられてた文の、最後の一文。
病室から見上げた空はfineさんの見てた空と同じで、雲一つなくてどこまでも澄んでいる。
「……よーし、頑張ろう。」
頑張って生きよう。
いつこの平和な幸せが崩れるか分からないけど、その日まで。
窓の外から差し込む光に包まれながら、少し冷めたごはんを掻き込んだ。
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天凪(プロフ) - サクラさん» このような形になってしまい、本当にすみません…!これからも頑張りますので応援よろしくお願いします! (2017年3月6日 8時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - そうだったんですねぇ、これからも頑張って下さい!! (2017年3月5日 19時) (レス) id: d7def24883 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 萌伽さん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません!これからも頑張ります。温かい応援よろしくお願いします! (2017年3月5日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
萌伽(プロフ) - とても面白いです!! こんな文章かけていいなと思います、 これからも更新頑張ってください! (2016年10月3日 9時) (レス) id: 4cef1c3763 (このIDを非表示/違反報告)
乃海(プロフ) - Jokerさん» ありがとうございます!頑張ります〜!<(_ _)> (2016年4月3日 10時) (レス) id: 99f0b4f5e8 (このIDを非表示/違反報告)
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