vol.37 ページ38
「太陽の光を浴びると元気出ますよね。」
「そうですよね。あ、ちょっと待ってください。」
薮さんはズボンのポケットからスマホを取り出すと、空に向けて写真を撮った。
俺がそれを眩しそうに見ていると、彼は撮った写真を見せてくれる。
「うわ……すごい。」
それは俺がいつも『青空日和』で見ている写真そのものだった。
雲のない晴れた空。
太陽の光が眩しくて、目が眩んでしまいそうだ。
「良かったら後でメールで送っておきます。」
その言葉に目を輝かせて、ありがとうございます!とお礼を言おうとした時だった。
「……こんなものでいいなら。」
冷めた目と低くなったトーンに、蒸し暑さが感じられなくなる。
それと同時に信じられなかった。
俺の中の『fine』さんは自分とは全く境遇の違う世界に住んでいる人で、俺が普段感じている悩みや不安なんかとは関係のない世界の人。
それでいて、非の打ちどころのない完璧で誰からも愛される人。
もちろん彼の全てを知っている訳ではない。
だけど一瞬だけ、彼が俺の憧れている『fine』さんなのかと疑ってしまった。
「そろそろ部屋、戻りましょう。」
・
・
時間にしてみればそんなに長くはなかった。
だけど少しの間だけでも太陽の光を浴びられただけで幸せだった。
「やっぱり無理しない方が良かったんじゃ…」
「無理なんかじゃないです。俺の我が儘ですから。」
「……体調、良くないんですか?」
唐突で直接的な質問につい体がビクッと縮まってしまう。
こうも図星を突かれるのかと諦めかけていた。
「やっぱり。俺、余計なことしちゃいましたね。」
表情こそは笑っているものの、言葉は全然笑っていなかった。
それどころか笑顔も何だか貼りつけたような笑顔で、先ほどまでの俺を安心させてくれる笑顔とは全く違うものだった。
「そんなことないです。本当に嬉しかったんですから。『最期』に太陽の光を浴びられて幸せだったんです。」
「『最期』って…。」
「あっ……ごめんなさい、深い意味はないんです。」
「………。」
疑問と言うよりは困惑の表情。
そんな顔をさせたかった訳じゃなかったのに、それなのにどうして俺は…。
……あぁ、なるほど。
そういうことだったんだ。
自分では気づいていないつもりだったけど、本当はそうだったんだ。
薮さんにはちゃんと、知っておいてもらいたいんだ。
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天凪(プロフ) - サクラさん» このような形になってしまい、本当にすみません…!これからも頑張りますので応援よろしくお願いします! (2017年3月6日 8時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - そうだったんですねぇ、これからも頑張って下さい!! (2017年3月5日 19時) (レス) id: d7def24883 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 萌伽さん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません!これからも頑張ります。温かい応援よろしくお願いします! (2017年3月5日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
萌伽(プロフ) - とても面白いです!! こんな文章かけていいなと思います、 これからも更新頑張ってください! (2016年10月3日 9時) (レス) id: 4cef1c3763 (このIDを非表示/違反報告)
乃海(プロフ) - Jokerさん» ありがとうございます!頑張ります〜!<(_ _)> (2016年4月3日 10時) (レス) id: 99f0b4f5e8 (このIDを非表示/違反報告)
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