vol.36 ページ37
side 慧
今日は高木が朝の検査に来たときに少し体を起こした程度で、ほとんど横になった状態で過ごしている。
つい先ほどの昼食の時間も、ご飯が喉を通らなくて食欲は全くなかった。
それどころか吐き気のようなものも僅かながらにあった。
退屈な昼が終わって夕方になって、そのまま夜になって。
そしてまた次の朝を迎えて退屈な昼が訪れる。
この終わらない循環をあと何回繰り返せばいいのだろうか。
時間はたっぷりあるはずなのに、それを考えている場合ではないような気がして。
…本当は考えたくもなかった。
少し前までは散歩にも行けてたし、院内を探検していたりもした。
昼食の時間までに部屋に戻って来れなくて高木に怒られたりもした。
トントントン。
ノックの音がして、目線だけそちらに向ける。
まだ検査の時間でもないし食事の時間でもない。
それならば何だろうと、頼んでもいないのに心臓が激しく動き出す。
しかし、開いたドアの先には
「こんにちは。」
「……えっ!?」
急いで体を起こしたものだから、貧血のような症状に襲われて目眩がした。
だけどやっぱりそれはどう見ても
「……薮、さん?」
彼は俺の元へと駆け寄って、そっと体を支えてくれた。
落ち着いてから彼の顔を見上げると、彼は安心したように笑った。
「突然でごめんなさい。」
俺が椅子を勧めると彼はこの間と同じようにそこに座る。
最近は電話はおろかメールのやりとりもしていなかったから、会うのは何だか新鮮で。
「すみません、最近はちょっと体調が優れなくて。」
「さっき高木先生から聞きました。」
俺を安心させるためなのか、無理しなくていいよという合図なのだろうか、彼はまた笑顔になる。
だけどその笑顔に心が落ち着いていくのもまた事実で。
「あの、一つだけお願いしてもいいですか?」
・
・
「すみません、我が儘言って。」
「大丈夫です。俺に出来る事なら何でも言って下さい。」
『我が儘』と称してやって来たのは病院の中庭。
体力も急激に落ちた俺は薮さんに車椅子を押してもらっている。
「俺、こういう経験ないんで不安です。もし落としちゃったらすみません。」
冗談交じりの声が後ろから温かく降ってくる。
最近は梅雨で雨が多かったけれど、今日は見事なまでの快晴。
窓越しではない青空を見るのは久しぶりだった。
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天凪(プロフ) - サクラさん» このような形になってしまい、本当にすみません…!これからも頑張りますので応援よろしくお願いします! (2017年3月6日 8時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - そうだったんですねぇ、これからも頑張って下さい!! (2017年3月5日 19時) (レス) id: d7def24883 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 萌伽さん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません!これからも頑張ります。温かい応援よろしくお願いします! (2017年3月5日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
萌伽(プロフ) - とても面白いです!! こんな文章かけていいなと思います、 これからも更新頑張ってください! (2016年10月3日 9時) (レス) id: 4cef1c3763 (このIDを非表示/違反報告)
乃海(プロフ) - Jokerさん» ありがとうございます!頑張ります〜!<(_ _)> (2016年4月3日 10時) (レス) id: 99f0b4f5e8 (このIDを非表示/違反報告)
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