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vol.30 ページ31

「それじゃあ俺はこれで。」


ここまで案内してくれた高木さんがそう言った。


「ありがとうございました。」


俺がお礼を言うと、彼は一礼してからドアを閉めた。
そしてベッドに座っている彼が、



「……アオさん、ですよね。」


「そうです。」


日焼けとは無縁そうな白い肌に少し長い髪。
一般人ではもったいないほど端正な顔立ちをしている彼はニコリと微笑んだ。


「やっと、会えましたね。」


あ、と手に持っていた紙袋に気付く。
一応ちゃんと持ってきたつもりだけど、大丈夫かなと心配しながら、



「これ、駅前のプリンです。よかったら後で食べましょう。」

「うわ…!いいんですか?嬉しいです。」



だんだんと気温が上がっている時期に、要冷蔵だからとアオさんは冷蔵庫にプリンをしまった。
一応、買ったときに保冷材は入れてくれたはずなんだけど。


「あ。すみません、自己紹介がまだでした。『青空日和』の管理人のfineです。」


順番が入れ違ったけれど、俺はちゃんと自己紹介をした。
初対面だし、面識もそんなになかったから所々に生まれる間がとんでもなく心地悪かった。


「……ふふっ。」



吹き出したかと思えば、今度はケラケラ笑い出したアオさんに戸惑いを隠せなかった。


「えっ…あの、何か面白いこと言いました?」


心当たりが無くてそれを必死に探してると、まだ笑いながらアオさんはベッドの横の椅子を勧めた。
俺が黙って勧められるがままに椅子に座ると、ようやく笑いが収まったのかアオさんは話しだす。



「すみません、俺ずっと『ファイン』さんだと思ってて…!『フィーネ』さんなんですね!」


「あ…。」


そうか、それで…!
ようやく笑いの意味が分かった俺は彼と一緒に笑い出す。


それが最初の笑顔だった。



「改めましてアオこと伊野尾慧です。アオでも伊野尾でも好きな方で呼んでください。」

「あぁ、えっと『フィーネ』こと薮です。すみません突然お邪魔して。」

「まさか本当にお会いできるなんて思ってなかったです。」


ふんわりとした雰囲気を纏った彼の笑顔は初対面なのに、心が軽くなるようで。
上手く言えないけれど、俺がずっと追い求めていたような、探していたような。


「……。」

「……。」


一度口を閉じてしまえば、それまで気にならなかったはずの沈黙がやけに気になって。



「……ふふっ。」


それを打開するのもまた笑い声で。

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天凪(プロフ) - サクラさん» このような形になってしまい、本当にすみません…!これからも頑張りますので応援よろしくお願いします! (2017年3月6日 8時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - そうだったんですねぇ、これからも頑張って下さい!! (2017年3月5日 19時) (レス) id: d7def24883 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 萌伽さん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません!これからも頑張ります。温かい応援よろしくお願いします! (2017年3月5日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
萌伽(プロフ) - とても面白いです!! こんな文章かけていいなと思います、 これからも更新頑張ってください! (2016年10月3日 9時) (レス) id: 4cef1c3763 (このIDを非表示/違反報告)
乃海(プロフ) - Jokerさん» ありがとうございます!頑張ります〜!<(_ _)> (2016年4月3日 10時) (レス) id: 99f0b4f5e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:のみなぎ x他1人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2016年4月1日 0時

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