vol.29 ページ30
side 薮
暦の上ではもう6月だが、今日はそんな風に感じさせない気温だった。
普通はじめじめとした梅雨の時期だが、今日に限っては全くそんなことはなくて。
久しぶりに見た雲一つない快晴に、俺のテンションも上がっていた。
カシャ、とシャッターの音と同時に『保存しました』の文字。
青空はやっぱり綺麗だな、と紙袋を片手に歩く昼下がり。
到着したのは大きな総合病院。
そう、今日はアオさんと会う日。
あの後、アオさんの方から返信が来た。
『本当にいいんですか?俺なんかの為に、fineさんの時間を割いてしまうなんて申し訳ないです。でも、もしそれが本当なら―――』
俺に力を貸してください。
その一文に込められたメッセージが画面越しに伝わってきて。
俺なんかで大丈夫なのか、本当に助けになるのか。
それでも俺が誰かに必要とされている事実を無視したくなくて。
何度も迷って。
あの返信を送った後にやっぱり後悔して。
ずっと迷って、後悔して、夜を恐れて。
それを何度も繰り返して来た。
でもアオさんはその暗い夜に光を注いでくれた。
俺が何か役に立てるなら何でもする。
それは今思うと自分のエゴなのかもしれなかった。
アオさんの為にという建前で、本当は自分の為なんじゃないかって思ってた。
アオさんならこの現状を変えてくれるかもしれない。
それは期待に見せかけた、どうしようもない我がままで。
今もアオさんに教えてもらった病院に一歩近づくたびに足取りが重くなる。
・
・
受付で予め部屋番号を言うと、同年代くらいの若い男性の看護師が案内してくれた。
名札には『高木雄也』と書かれており、少し明るめの髪色が目立つ。
「伊野尾くんのお知り合いですか?」
彼の病室に向かう途中でそう声を掛けられた。
「えっと……まぁ。」
複雑だった。
今日が初対面なんです、というと関係者以外立ち入り禁止ルールで追い出されるんじゃないかと思って。
そもそも名前も『アオさん』とか知らないから、イノオさんって言った?
……とにかく、アオさんがイノオさんなのかも分からないし。
個室が並ぶ階の一番奥。
俺が聞いた部屋番号に『伊野尾慧』と書かれたプレート。
あ、これで『イノオ』なんだ。
遂にアオさんイコール、イノオさんまでの方程式が解けた。
高木さんがノックをすると中から声があり、俺は扉の向こうの彼と対面する。
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天凪(プロフ) - サクラさん» このような形になってしまい、本当にすみません…!これからも頑張りますので応援よろしくお願いします! (2017年3月6日 8時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - そうだったんですねぇ、これからも頑張って下さい!! (2017年3月5日 19時) (レス) id: d7def24883 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 萌伽さん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません!これからも頑張ります。温かい応援よろしくお願いします! (2017年3月5日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
萌伽(プロフ) - とても面白いです!! こんな文章かけていいなと思います、 これからも更新頑張ってください! (2016年10月3日 9時) (レス) id: 4cef1c3763 (このIDを非表示/違反報告)
乃海(プロフ) - Jokerさん» ありがとうございます!頑張ります〜!<(_ _)> (2016年4月3日 10時) (レス) id: 99f0b4f5e8 (このIDを非表示/違反報告)
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