曖昧 me mind

vol.28 ページ29

『いえ、感謝を伝えるのはこちらの方です。実は今、僕は入院しています。怪我ではなく、病気で。病院からは出られないのでfineさんの見せてくれる外の世界がキラキラしていて、本当に元気を貰えるんです。感謝してもし足りないほどです。』


そのコメントは紛れもない、アオさんのものだった。
最近はなかなかブログの更新も出来ずに、コメントにも気づかなかったので返信がかなり遅くなったが、それでもちゃんと読者で居てくれたのだと思うと安心感に包まれた。



しかし気になったのはその文面。


『実は今、僕は入院しています。怪我ではなく、病気で。』
入院、と聞くとやっぱり想像してしまうのは怪我の方だ。
実際に俺の友人も、この間ちょっとした事故で足を骨折したと聞いた。
だけどアオさんのそれは、きっと「大丈夫かよ！」と笑い飛ばせるものではない。


その事実が俺には衝撃的すぎて、一人称が「僕」だから男性なのだと気付くのには少し時間がかかった。


『病院からは出られないのでfineさんの見せてくれる外の世界がキラキラしていて、本当に元気を貰えるんです。』


俺の見せる世界？
外の世界がキラキラしている？

俺の目には当たり前に映っているこの風景が、温度が、彼にとってはキラキラしている。
病院から出られないって、そんなに重度なものなのだろうか。
もちろん相手は顔も名前も知らない、ただ少し近い所にいるであろう他人。
下手な詮索は俺だってしたくない。
でも、それをしてしまう自分もいたりして。


元気を貰える、とアオさんが言うには説得力がありすぎて。
それがタチの悪い作り話であったとしても、今の俺には言葉に表せない程の感動で。


『僕にとっては当たり前のものでも、アオさんにとってはそんな風に映っていたんですね。あの、変なことを言っているのは理解しています。もしよろしければ…ですけど、僕でよければアオさんの力になれませんか？間接的でも直接的でも、僕に出来る範囲であれば何でも。もちろん駄目なら駄目で大丈夫です。』


変な文だな、と読み返して思う。
きっとあと数時間置いて読み返せば、俺はこの文を消してしまうだろう。


こんな突発的なことをするのはきっと自分の感情が高ぶっているからなのは理解できる。
それでも衝動に逃げられてからでは遅いのだ。


俺とアオさんの見ている写真は同じなのに。
なのに二人とも、違う答えを出す。


もしかしたらアオさんなら、自分の運命を変えてくれるのではないか。

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