vol.27 ページ28
side 薮
段々と気温も上がってきて、陽気な春が終わる。
カラッと晴れた真夏にはまだ少し届かない、じめじめした六月の気温。
梅雨になるともちろんのことだが雨が多くなる。
そうなると必然的に俺の好きな青空が見れる確率も少なくなるわけで。
『青空』『雨』『雲』『太陽』
いくつも言葉を書いては交互に眺め、結局何も出来ないで紙を破り捨てる。
グシャグシャにして、ゴミ箱に投げ入れる。
そんなに遠くないはずの距離なのに、紙はゴミ箱に入ることなく淵に当たって床に落ちる。
「……あーあ。」
もう、と椅子から立ち上がって丸めた紙を今度こそゴミ箱に入れる。
何でだろう、どうして何も思いつかないんだろう。
そればかりを責めたって何かいい案が出る訳でもないのに。
でもそうでもしないと、自分の気が狂ってしまいそうになる。
周りが優しく慰めるたびに、俺は自分が自分じゃなくなっていく。
皆の見てる『俺』は誰だ?
それは『俺』の姿をした別人?
絶対に答えは出ないと分かっていたのに、それでも答えを求めてしまうのは何故だ?
いや、やめよう。
深く考えれば考える程、自分をどんどん追い込んでしまう。
今、何時だろう。
ふと思ったその疑問を確かめにスマホの画面を点灯する。
ロック画面は以前、光と行った湖畔の写真。
15:18
もうすぐ夕方だ。
日は長くなってきたとはいえ、夜は当たり前にやってくる。
その夜が、長く感じて。
一人の夜がとてつもなく怖くて。
夜の暗闇が怖い訳ではない。
それなら電気を点ければいいだけなのだから。
お化けが出そうで怖いという訳でもない。
そもそも、そんな非現実な存在を信じてもいない。
それでも俺が夜を恐れるのは、きっと太陽の届かない『闇』の世界だから。
月明かりだけでは頼りなくて、それはなんだか自分を表しているようで。
昼間には眩しい程に照りつける、大きな太陽でも照らせない闇。
あるいは、眩しい太陽でさえも飲みこんでしまう闇。
それが夜を恐れる理由だ。
「……あれ?」
ぽつりと呟いた言葉はもちろん、誰の耳にも届かない。
いつもなら独り言とか寂しいな、と思うが今日はそうは思わない。
『コメントに返信がありました』
そのメッセージの心当たりは一人しかいなくて。
顔も見えない画面の向こうの誰かに頼っている自分が情けない反面、それに縋るしかなかった俺の太陽が雲の切れ間から顔を覗かせる。
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天凪(プロフ) - サクラさん» このような形になってしまい、本当にすみません…!これからも頑張りますので応援よろしくお願いします! (2017年3月6日 8時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - そうだったんですねぇ、これからも頑張って下さい!! (2017年3月5日 19時) (レス) id: d7def24883 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 萌伽さん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません!これからも頑張ります。温かい応援よろしくお願いします! (2017年3月5日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
萌伽(プロフ) - とても面白いです!! こんな文章かけていいなと思います、 これからも更新頑張ってください! (2016年10月3日 9時) (レス) id: 4cef1c3763 (このIDを非表示/違反報告)
乃海(プロフ) - Jokerさん» ありがとうございます!頑張ります〜!<(_ _)> (2016年4月3日 10時) (レス) id: 99f0b4f5e8 (このIDを非表示/違反報告)
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