vol.25 ページ26
side 慧
春が終わり、夏に差し掛かろうとしているこの季節。
散歩に行こうにも、じめじめとした空気が肌にまとわりつくのはどうしても苦手なのでパス。
「伊野尾くん、調子どう?」
「……フツー。」
毎日の高木とのやりとりも、飽きたを通り越して段々と疲れてきた。
高木は壁に貼ってあるカレンダーを勢いよくめくった。
「もう6月かぁ。そろそろ夏だね、伊野尾くん夏は好き?」
呆然とカレンダーを眺めているとどうしても22日に目が行ってしまう。
仕方のない事なのかもしれない。
だってその日は俺の誕生日なのだから。
「……嫌い。」
一言だけ告げると高木は苦笑した。
……あぁ、駄目だな俺は。
変わり映えのしない毎日に吐き気さえする。
そんなストレスを高木にぶつけてるだけじゃないか。
「ごめん。」
「何が?」
「ううん……高木はどうなの?夏、好き?」
俺がそう聞くと、高木はめくった5月のカレンダーを小さく折りたたみながら考える。
半分、また半分と小さくなっていくカレンダーを見ると何だか心が痛かった。
それが何でなのかは分からない。
だけど何となく、それが自分を表しているようで。
「暑いのは嫌だけど、俺は好きだよ。夏になったら海にも行けるし!」
「海、好きなんだ?」
あー、でも何となく分かるかも。
高木、サーフィンとかやりそう。
「海にはいつ行くの?」
「それは決まってないけど、近いうちに行きたいなーとは思ってるよ。」
そっか、と返事すると高木は小さく折りたたんだカレンダーをゴミ箱にシュートする。
少し離れていた位置から投げたせいか、ゴミ箱の淵に当たって床に落ちる。
俺は下手くそー!と茶化し、高木はそれに対して今のはたまたま!と言い訳。
今度こそゴミ箱に入れたのを見届けて、俺はまた壁のカレンダーに目をやる。
6月22日。
きっと今年もここから抜け出すのは不可能に近いだろう。
両親と大ちゃんは来てくれるはずだ、誕生日おめでとうって言いながら。
病院の中だと使えるものも限られるし、毎年プレゼント選びには迷惑かけてるなーと思う。
極端なことを言えばプレゼントなんていらないし、気持ちがあればそれで充分だ。
それに何だか歳を取るのが嫌だ。
老化がどうとかそういうのではなく、単純に生きられる時間が減っていくということが、だ。
「……高木、一つだけお願いしてもいい?」
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天凪(プロフ) - サクラさん» このような形になってしまい、本当にすみません…!これからも頑張りますので応援よろしくお願いします! (2017年3月6日 8時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - そうだったんですねぇ、これからも頑張って下さい!! (2017年3月5日 19時) (レス) id: d7def24883 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 萌伽さん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません!これからも頑張ります。温かい応援よろしくお願いします! (2017年3月5日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
萌伽(プロフ) - とても面白いです!! こんな文章かけていいなと思います、 これからも更新頑張ってください! (2016年10月3日 9時) (レス) id: 4cef1c3763 (このIDを非表示/違反報告)
乃海(プロフ) - Jokerさん» ありがとうございます!頑張ります〜!<(_ _)> (2016年4月3日 10時) (レス) id: 99f0b4f5e8 (このIDを非表示/違反報告)
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