vol.20 ページ20
その日の夜。
睡魔は中々襲ってこなかったが、無理やりに目を閉じて何とか体だけでも休めようとベッドの上で静かに寝ていた。
どうも脳は自分のあまりよくない思い出を記憶したがるらしい。
俺にとって『才能』という二文字は自分自身を苦しめる言葉。
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俺と光が出会ったのは大学生の時だった。
二人とも芸術学校の出身で光は美術学科、俺は音楽学科の出身だ。
実を言うと両親は音楽家だ。
世界的にも有名な音楽家で何かのコンクールで出会ったらしい。
そこに生まれた一人っ子の俺は、幼い頃から音楽教育を受けてきた。
しかしプロの音楽家ともなれば指導は厳しい。
最初は色んな楽器を演奏することにやりがいや楽しさを感じていたが、それもすぐに無くなった。
一概に言うと、俺は『左利き』だ。
だから右利き用にしか作られていない楽器を演奏するのは正直、苦痛でしかなかった。
「音楽界で左利きは多いから大丈夫よ。」
母親にもそう言われたが、やはりそこに価値を見いだせなかった。
小学生の頃は、スポーツが好きだった。
休憩時間になればよくサッカーをしたりもした。
音楽とは無縁の人生を歩んでいた。
しかし中学生にもなれば、感覚は変わる。
名の知れている親のレッテルが、俺を苦しめた。
その頃の俺は、よくコンクールなどで賞をもらうほど作文が得意だった。
自分が思っていることをそのまま文にすることは、当時の俺にとってそれほど困難な事ではなかった。
そこで両親に勧められたのが『作詞家』の道だ。
音楽に命を吹き込む仕事、色を付ける仕事だと言われ、俺もそれには賛成だった。
肩の重荷が下りた、と言えば聞こえはいいのかもしれない。
両親の『将来は音楽の道に進んでほしい』という期待にも、また俺自身の『得意なことを生かしたい』という願いも叶えられる道だった。
そこで初めて光と出会った。
キャンパス内で、木の絵スケッチしている彼の背中を見た時、自然と足が止まった。
「……木の絵、書いてるんですか?」
俺が少し小さな声で話しかけると、彼はゆっくりと振り返った。
それが最初の出会い。
後に彼は八乙女光といって一つ下の美術学科の生徒だと知る。
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天凪(プロフ) - サクラさん» このような形になってしまい、本当にすみません…!これからも頑張りますので応援よろしくお願いします! (2017年3月6日 8時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - そうだったんですねぇ、これからも頑張って下さい!! (2017年3月5日 19時) (レス) id: d7def24883 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 萌伽さん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません!これからも頑張ります。温かい応援よろしくお願いします! (2017年3月5日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
萌伽(プロフ) - とても面白いです!! こんな文章かけていいなと思います、 これからも更新頑張ってください! (2016年10月3日 9時) (レス) id: 4cef1c3763 (このIDを非表示/違反報告)
乃海(プロフ) - Jokerさん» ありがとうございます!頑張ります〜!<(_ _)> (2016年4月3日 10時) (レス) id: 99f0b4f5e8 (このIDを非表示/違反報告)
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