▼口は災いの元っていうよね ページ31
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自分は寂しいのだと自覚してから、一度は自分から桃原に話しかけようと試みた。しかしタイミングが悪いことにテスト期間に入ってしまったようで、休み時間は友達と話す時以外は基本桃原は勉強に打ち込んでいた。
…あんな真面目な顔するんだな。意外。
そして俺は気づく。俺は桃原の事をよく知らない。今まで桃原から話しかけてきたから、普段桃原が何が好きで何に興味があるのか、全然知らなかったのだ。
しいて言えば家族構成くらい。本当にそれくらい桃原は自分の事をそこまで話さないし、俺も聞いた事がなかった。
残念ながら俺には友達と言える人間が玲王くらいしかいないし、玲王もまた自分から話しかけてくるタイプなので何を話せばいいのかわからない。
ん〜…どうしたものか。
変に身構えてしまい、一週間ほど経った頃に転機は訪れた。ある日、放課後あまりに眠すぎて保健室のベッドを借り、もうすぐ下校時間になるから帰れと先生に追い出された。致し方なく教室に鞄を取りに行くと、桃原の姿があったのだ。
べろ〜んと椅子に寝そべって目を閉じている彼女を見て、足が止まる。今なら勉強してないし話しかけられそうだ。そして静かに歩み寄ったところで予想だにせず彼女は口を開いた。
『会いたいなあ…』
「誰に?」
『…………………凪くん?』
驚いた彼女はどっから現れたのかなどと聞いてくる。久しぶりに向けられた桃原からの視線はなんだか新鮮で、でも彼女はすぐに目を閉ざしてしまった。どうやら眠いらしい。
あくびを溢し寝そべる彼女に少しの落胆を感じたのは気のせいではなかった。俺の近くで一喜一憂する彼女を見すぎてしまっていたのだろう。もっと「え!凪くんだ!」と溌剌する様子を予想していたのでなんだか物足りなく思ったのだ。
話しかけるだけで喜ぶかと思っていた自惚れを誤魔化すために珍しく俺から話しかけた。なんて事はない会話だ。いつも玲王とするような、何の変哲もない会話。
寝そべっている桃原の下敷きになったルーズリーフに目がいく。そこには数式や文字の羅列がずらっと並んでおり、こんなにやるのかと驚いた。
頑張っているのだろう、テストのために。それくらいわかっていたのに、俺の口は災いをもたらした。
「…皆こんなに勉強するの?」
『へ?…あーうん。成績上位者はこの倍はやるだろうね』
「ふーん…
勉強にこんなに時間かけるとか面倒だね」
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雪菜(プロフ) - Kyoro丸。さん» !!!!めちゃくちゃ嬉しいです〜!!続編行きそうなのでこれからも頑張ります!!ありがとうございます☺︎☺︎☺︎ (2023年4月7日 16時) (レス) id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
Kyoro丸。(プロフ) - いや、これは殿堂入りしなければならない作品でしょ!めっちゃタイプです!これからも頑張ってください〜! (2023年4月7日 14時) (レス) @page10 id: ea6fdef67d (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - みっちゃんさん» うわあああ嬉しいです!!春休みなのでちょくちょく更新していきます!ありがとうございます〜〜〜!!! (2023年4月7日 12時) (レス) id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん(プロフ) - もうどタイプすぎて時間を忘れて一気見してましたwww. 新しい更新まってまーーーす!!!!!!! (2023年4月7日 12時) (レス) @page33 id: 49aaf38551 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - さえさん» 本当ですか…!!!!めちゃくちゃ嬉しいです!!!動悸がすごいです!!ありがとうございます〜!!!☺︎☺︎☺︎ (2023年4月3日 0時) (レス) id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪菜 | 作成日時:2023年3月7日 21時