▼口角が引き攣る ページ29
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ついに幻覚をつくり出すほど私の頭はイカれたのか。あまりにタイミングが良すぎる登場をした当の本人は「何驚いてんの」と顔を近づけてくる。本物だ。だって匂いが凪くんだもん。
…まって通報しないで好きな人の匂いくらいわかるって。
『凪くんどっから現れた?』
「今さっき保健室から帰ってきた。放課後眠すぎて…そろそろ帰れって追い出された」
『まあこんな時間だしね…ふわぁ』
「…眠いの?」
『んー…凪くん見たら眠くなってきた』
「何それ意味わかんない」
のけぞっていた体勢を戻し、机に寝そべる。
いつもなら凪くんを見た途端に懲りずに話しかけるのだが、生憎今は頭が疲れすぎてて会話を繋ぐ気にもなれない。そして私達の間に流れる沈黙。
…私が喋らないとこんなに静かなんだなあ。今までこんな事なかったからなんだか不思議な気持ちだ。
「…解いてたの数学?」
『そー。でも途中で公式間違えちゃってやり直しになっちゃったし、化学と生物は苦手すぎて覚えらんない…凪くんは得意科目ある?』
「歴史は暗記科目だから得意」
『んー…生物も暗記って言われそうだなこりゃ』
暗記科目だから簡単ってわけでもない。実際、白宝の定期テストは教科書から出るとは言えど隅に書かれた小さい部分やそれを応用して考える問題が多数出たりする。
歴史だってそう、人名と出来事は覚えられてもその時系列をちゃんと覚えてなければ普通に問題を外す。…まあそもそも勉強に近道はないのだろう。
そう考えると勉強を放棄したくなる。いやあと一週間しか猶予がないんだけどね!
「…皆こんなに勉強するの?」
『へ?…あーうん。成績上位者はこの倍はやるだろうね』
「ふーん…」
突如、凪くんが私の腕の下敷きになっていたルーズリーフを数枚引っ張り出した。何かと思えばじっと見てそのまま動かなくなる。
いやあの、計算用に殴り書きしたやつだからそんなに凝視されると恥ずかしいのですが…。
少し困惑していると、凪くんはようやく口を開いた。
「勉強にこんなに時間かけるとか面倒だね」
口角が引き攣るのを感じた。
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雪菜(プロフ) - Kyoro丸。さん» !!!!めちゃくちゃ嬉しいです〜!!続編行きそうなのでこれからも頑張ります!!ありがとうございます☺︎☺︎☺︎ (2023年4月7日 16時) (レス) id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
Kyoro丸。(プロフ) - いや、これは殿堂入りしなければならない作品でしょ!めっちゃタイプです!これからも頑張ってください〜! (2023年4月7日 14時) (レス) @page10 id: ea6fdef67d (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - みっちゃんさん» うわあああ嬉しいです!!春休みなのでちょくちょく更新していきます!ありがとうございます〜〜〜!!! (2023年4月7日 12時) (レス) id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん(プロフ) - もうどタイプすぎて時間を忘れて一気見してましたwww. 新しい更新まってまーーーす!!!!!!! (2023年4月7日 12時) (レス) @page33 id: 49aaf38551 (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - さえさん» 本当ですか…!!!!めちゃくちゃ嬉しいです!!!動悸がすごいです!!ありがとうございます〜!!!☺︎☺︎☺︎ (2023年4月3日 0時) (レス) id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪菜 | 作成日時:2023年3月7日 21時