私に興味がない凪くん。【凪誠士郎】

▼押して引く作戦、決行 ページ25

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「奪(と)られる前に奪(と)れ」


「とりま思いっきり威嚇しとけ」


『そんなバッサリ…まあやるけどさ』


「あ、やるんだ」





後輩と恋敵になったかもしれない。珍しく惚気以外で恋バナを友達に振りかけたが、そんなバッサリとしたアドバイスしかもらえなかった。もうちょい具体的なものない？


まあ、クラスメイトの面前でアピールしているような女だ。威嚇なんてものは躊躇わずとも出来る。だけどやっぱり今まで仲良くしていた後輩が恋敵となると何かとやりづらい。



…が、あの子に凪くんを奪られたくない。絶対。



ずーっとアピールしているのだ、凪くんを思う気持ちは負けてないと思う。ただ万が一、ああいう普段は消極的だけど頑張って積極的になってますよみたいな子に惹かれてしまったらどうしようと不安が生まれた。



幸せ恐怖症とかそんなの言ってらんない。


恋は戦争。負けたら終わりなのよ…！！！





「って言ってもねえ。ぽっと出の新米マネージャーが何にも無関心かつ世の中ナメてるセイシロウ・ナギをオトせるとは思えないのよ」


「そうそう。名前覚えてなさそう」


『いやー…でも普段目立たない子が頑張ってアピールしてたら惹かれる気持ちもわかっちゃうんだよね。ほっぺ赤らめてたらもう意識しちゃうよ』


「確かにアンタに初々しさは感じないわね」


『ヴッ…耳が痛い話』





初々しさなど公開告白を機にドブに捨ててきた。


今までは緻密に作戦行動したり好きバレするかしないかあたりのギリギリのラインを攻めたりしていたが、今ではこれである。人間ってきっかけがあれば意外と変わる。これ真理。





「やっぱアンタのアピール方法に問題あるでしょ」


「“俺を好いてるのが当たり前” って思われたら終わりだよ。いっつもアンタから話しかけてるしたまには引いてみたら…って、前もこの話したね」


『うん。凪くんと会話できないのはツラい』


「…でもこのままあの後輩に凪を持っていかれたらどうすんの？アンタにない初々しさとか新鮮さに心奪われたりしちゃってね」


「他人に興味がない凪の熱っつい視線を独り占めされちゃったりしてね」


『…





その方が、嫌』


「やっぱりね」





このまま潮田ちゃん(後輩マネ)に奪られるわけにはいかない───こうして彼女が凪くんに接近する水面下、私たちは今度こそ “押して引く作戦” を実行に移す事を決めた。







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