もう一人の天才【約束のネバーランド】

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「発信器を無効にするにはこれを使え」



レイがノーマンに何かを投げた。


手のひらサイズの、四角い装置。





「左耳に当ててスイッチを押せばママに通知がいかずに無効化できる」





内通者をする取引の"おもちゃ"から、こんな凄いものを作るなんて………。


どれだけの執着と苦しみを伴っただろうか。


レイの頭を撫で回す。


髪がぐしゃぐしゃになるまで。





「おい、A」


『いいじゃん。みんないつも私の頭撫で回すんだから』


「それはそこに頭があるから………」


『私がチビだと言いたいのか』


「痛い痛い！」




笑ってた。


みんな辛いことを忘れて笑ってた。


脱獄の準備は着々と進んでいる。


ロープも用意してるし、ノーマンの潜伏準備だって進んでる。






『誰も欠けることなく逃げる』





それが現実になりそうだ。


ノーマンを出荷なんてさせない。


させてたまるか。


明日ノーマンが逃げて潜伏。


エマの足が治り次第決行。





「ノーマンは死なせない」




全員、絶対生きてここを出よう。







その日、ノーマンの"里親が見つかった"という連絡が子供たちに伝わった。


明日"ハウスを出る"ことも。


泣きわめく子もいた。


けど、最後は笑顔でおめでとうと言う。






『…………最後に"おめでとう"って、祝ってもらって死ねるのは幸せだね』


「…………は？」


『もちろん今まで"出荷"された子が食べられたと思ったら悲しいよ。けど思っちゃうよ。

最後は笑っていて欲しいって』




コニーの時、きちんと笑えてたかな。


笑って見送れたかな。




『知らなければ幸せの楽園。知ってしまえば悪魔の牢獄。けど知らなければ食べられる。究極の選択、なのかな』




そう呟けば、レイが肩に手を回してくれる。


そのまま体を預けた。


大丈夫、一人じゃない。


私達は生きてる……………。

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