立つ鳥跡を残さずⅢ【wr/wr/d】 (ページ6)

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また、あの子と、チーノと、3人で一緒に居るために。そんなの、僕がこんなことをしていたら、叶うはず無いのに。

気付けば、あの子と別れたとき、チーノと交わした約束も破っていた。

『Aから来るまで、こっちはAのことには手を出さないこと！』

彼女を我々国で見つけたとき、僕は焦った。だって、彼女は僕の知らない人達の中で、幸せそうに笑ってたんだから。
もう、僕がどれだけ強くなっても、彼女が戻ってくることは無いかもしれない。

だから、それで…チーノに頼んで彼女を無理矢理…。
彼女のことを昔の名前で呼んだとき、彼女は酷く傷付いた顔で僕のことを見た。彼女があの名前で呼ばれることを、嫌がるのを知っていたのに。

ただ、どんな形でも、彼女の中に居たかった。Aの意識の中に。
でも、それでも苦しくなって、どうしても僕のことを思い出してほしくて──

違う！
僕は…自分の為じゃ無いんだ。こんなことを始めたのは。
彼女の居場所を作るつもりだったのに。僕の近くに…。
でもそれじゃあ、結局僕の為じゃないか。

それに──

(何で僕は、彼女にこんな顔をさせてしまっているのだろう)

そうだ。こんなことにしたいわけじゃ無かった。
僕は、大切な友達を2人も悲しませて。馬鹿だ…。

もう絶対に触れることのできない、Aの頰に手を伸ばした。最早、僕には手と呼べる物すら残っていないのかもしれない。
それでも、彼女に触れたくて。

(もう泣かないでよ)

この言葉すらも、もう誰にも届かない。
しかし、悲しみに浸る時間すら無いようだ。
直感で、もうそろそろ、自分はここには居られなくなることを悟る。

(…ごめんね、チーノ。Aも)

もしも、この世界に神様が居るのなら。こんな僕の願いも聞いてくれる、慈悲深い神様が居るのなら。どうか、僕の願いを叶えてください。
どうかAに、居場所が見つかりますように。誰かが彼女を守ってくれますように。彼女が笑って暮らせますように。

おかしいな。
あのね、僕は君の…Aの為なら何だってできたんだよ。
それなのに、いつの間にか、君のことをきちんと見れてなかったようだ。

ごめんよ。
でも、こんな自分勝手な僕のことを──