それから ページ26
我々城の城内を忙しなく動き回っていると、トントンに声を掛けられた。
｢あ、A！大先生に会ったら、仕事しろって言っといて｣
｢今部屋にいないの？｣
｢おん。しかも仕事ほったらかしにしてな｣
｢……言っておきます｣
眠そうに話すトントンを不憫に思いながらも、再び目的の場所へ足を速める。
あの人、今日で何徹目なんだろう……。
ふと、窓の外を見ると、運動場に鬱さんの姿を発見した。ついでに、シャオロン姿も……って、トントンとゾム以外全員いるし。
不憫なトントンの顔を思い出し、鬱さん―とその他大勢―の元へ向かった。
ダクトの近くを通りすぎたとき、私は足を止めた。天井から聞こえる、この微かな物音は……。
｢わっ！｣
予想通り、天井にあるダクトから顔を出したのは、ゾムだった。
｢やっぱり｣
｢えー、なんで驚かないん？｣
｢そりゃ、何回も同じことされれば、流石に学習しますよ｣
｢ひひ、そうか｣
ゾムはダクトから出て、軽い身のこなしで廊下に着地した。
｢Aに見せたいものがあんねん｣
ゾムはそう言い、私の背中と膝裏に手を添え、持ち上げた。
｢えっ、こ、これって、｣
そして、満面の笑みを浮かべる。
｢行くぞ、A！｣
そのまま猛スピードで走り出したゾム。
｢あっ、え｣
｢運動場までひとっ飛びやーっ！｣
｢えーっ？！｣
私はただ、楽しそうな彼に、身を任せるしかなかった。
＊
運動場の端の方で、それは行われていた。
我々国幹部のほぼ全員が集まり、いそいそと何かを準備している姿は、シュールで面白かった。
｢連れて来たでー｣
ゾムが私を下ろし、全体に呼び掛けた。
｢ちょ、ゾム、時間より早いって｣
｢マンちゃん準備終わってる？｣
｢準備万端やで〜｣
｢コネシマさん、それちゃいますよ｣
｢は？これはシャオロンから……おい！｣
｢俺やないよー｣
｢トントンはまだか？｣
｢……あ、来たんとちゃう？｣
｢すまん、遅れた｣
｢お、時間ギリギリやん。セーフ｣
｢エミさん、それ砂糖じゃなくて塩｣
｢えぁっ？！｣
わちゃわちゃと動く彼らを見て、既視感を覚える。
なんだか、この後の展開が、なんとなく分かった気がする。
｢おーい、皆ー！そろそろ始めるぞー！｣
シャオロンの言葉を合図に、ここにいる全員が、一斉に口を閉じる。
｢それではー！A――｣
全員の視線が私に向き、ポケットに手を入れた。
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snow@エミさん推し - 完結おめでとうございます！とても面白かったです！ (2020年1月13日 5時) (
レス) id: a79ef504eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猫片くん | 作成日時：2019年8月6日 20時
