立つ鳥跡を残さずⅢ【wr/wr/d】 (ページ11)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:8,370 hit

不安ページ11

シンがいなくなってから、２日が経過した。
あの後、兄さんを含めた何人かは、我々国に戻った。流石に、他国に攻め入ろうというときに、自国にいる幹部が少ないというのは、世間体的にもまずいらしい。

という理由から、今ここ――先程までシンと乗っていた荷馬車に――残っているのは、私とチーノ、コネシマ、シャオロン、鬱さん、ひとらんの6人。
チーノを除く彼らには、グルッペン達がこっちに来るまで待てとの御達しが下っている。そのため、グルッペン達から連絡があるまでは、安全に隠れられるこの荷馬車の中にいることになったのだ。

相変わらず、コネシマとシャオロンはお互いにお互いを煽り合って、キャンキャンと喚いている。それに混じったり、ツッコんだりする鬱さんと、やれやれといった表情で、でも楽しそうなひとらん。
その中には、確かに彼らにしかない色があった。
私は、あれの名前を知っている。いつからか頑なに拒むようになっていたあれの名前を。

そこまで考えて、ふと、この間のチーノとしんぺいの会話を思い出す。

『じゃあ、シンは一旦我々国の方で預かるわ』

しんぺいは、我々国の兵士が用意した木箱にシンを入れ、そう言った。

『何から何まで、申し訳ないです』
『ええのええの。俺も好きでやっとるんやし……あ、あと、お墓はうちの城の敷地内に作ることもできるけど、どうしたい？』

しんぺいの言葉に、チーノは少し考えるような素振りを見せた。しかし、すぐに柔らかい笑みを浮かべた。

『シンはここに埋めてやろうと思います。ここは、俺達にとって初めての居場所なんです』

そのときチーノは、まるで憑き物が落ちたような、すっきりした顔をしていた。

彼は、もう前を向いていたのだ。自分の過去も全て飲み込んで、それを糧に、生きていこうとしているのだ。
噛む前に吐き捨ててしまった私とは違う。違うのだ……。

端の方で体育座りをしていた私は、顔を足と体の間に埋め縮こまった。
過去と向き合うと決めたものの、具体的なプランが何も思い浮かばない。それに、実際にあの人達に会ったとき、心が揺らがないでいられるだろうか。そんな私に、彼らは失望しないだろうか。

波のように押し寄せてくる不安におそわれ、それを隠すように、さらに縮こまる。
すると、背中に誰かの手が添えられた。