もう1人の最強2

84日目 ページ45

『だから、泣かないで？』

頭を撫でていた手を再び背中へ持っていき、弱々しく丸まった背中を優しく叩く。

悟を支配している、悪いものや不安なものが全部無くなって、いいものだけが入るように。

そんな呪い(まじない)は自己満に過ぎないと言われればそれまでだが、やらないよりずっといいはずだ。

親が泣いてしまった我が子を優しく抱きしめ、安心させるため言い聞かせるように、俺も悟に優しく言い聞かせる。

『大丈夫、悟は1人じゃないよ。

今は傑や硝子ちゃん、歌姫先輩に冥冥先輩だっていてくれる。

もし少しでも無理だと感じたら俺や夜蛾先生にも相談していいんだからね？』

「…俺には、Aしか居ないんだよ。」

『そんなことないよ？悟には沢山の仲間が…』

「っ俺にはAさえいてくれればいいのに、なんで分かってくれないの…！？」

あの”天上天下唯我独尊”を貫く悟がここまで取り乱すなんて思ってなくて思わず目を見開く。

『悟、落ち着いて…』

荒ぶる悟をなんとか落ち着かせようと優しく声をかける。

「あっ…ごめ、今の忘れて…。」

俺の声が聞こえたらしい悟の顔がやってしまった。という顔から、どんどんと絶望に染った顔になっていく。

そんな顔しなくても大丈夫なのに…。

何かに怯え震えてしまっている悟を強く抱き締め耳元で呟いた。

『そんなに怯えないでよ…。
悟が恐れている事態にはならないよ。
俺も悟のことが大好きだからね。』

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