Follow Your Heart【東京喰種】【短編集】

人の夢　/ 有馬 貴将（松茸とぽんず様リクエスト） ページ30

前の話の続きです。
有馬さんの妹


―――――


かつての同僚たちと血眼になって探していた場所。

その屋上の端
足をぶらつかせながら、何をするでもなくただ時間だけが過ぎていた。




『裏切りって殺されるのかな』


裏切った妹を、あの人は殺すのかな。



『それもいいな』


殺されるならせめて、あの人がいい。
そう思わないでもない。

それがいい。






屋上へ上がってくる気配がした。
最近聴覚が鋭くなってきたことを自覚する。



「……おい。何してんだよ」

『おーラビット君』



やって来たのは私より幾つか年下の男の子。

ずっと”追っていた”喰種が、こんな可愛い顔だとは思わなかった。
まじイケメンと言ったら殴られたけど。



「タタラさんが呼んでる。構成員たちに紹介だと」

『え。めんど』


「とっとと来い」

『……へいへい。分っかりましたよ幹部様』



ったく偉そうに

口に出せばまた殴られそうで黙っておいた。





背中が痛い。
ヒリヒリと焼けるように少しだけ疼く。

見慣れていたはずの赫子が、体に負担がかかることをついこの前知った。


自分自身の身体で、実際に。




薄暗い廊下を彼と並んで歩く。


『てか、マスク？私専用の作った方がいいよね。



一応准特等だったんで顔知られてるし』


「あぁ」

半分独白のつもりが、短く相槌を打ってきた彼が意外。






(喰種は、人の話をちゃんと聞いてくれるんだ)

喰種の話を、人間は聞かないのに。




(あながち私の選択も間違いじゃなかった？)


迷って選択した先が正しかったのか。
誰でもいいから教えてほしい。

目頭が熱くなってきて、アヤト君と並ばないよう歩を少しだけ緩めた。







『………兄さんは言うのが遅いんだよ』



加納先生のところへ行く前に言ってくれれば。

あるいは私は人間のままだったかもしれない。



(嫌われてると思ってた)

あからさまに避けられているのを、気づかないわけがない。




(無断欠勤ごめんね)

(もう遅いんだ)




たまたま好きになった人が兄だっただけで、

たまたま両想いだっただけ。



嬉しいはず。なのに。









(元人間に応える資格なんてないよ)



―――――――

金木と同じような考え方で、CCGにいるわけにはいかなかった、みたいな感じ。

有馬さんは知らないけど自ら望んで喰種化してるんです。

有馬さんとの絡みが無くて、
そのうえ分かりづらくて申し訳ないです。


リクエストありがとうございました。

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