４６. ページ48
・
C組の自席に戻ったのは、第一試合が始まるギリギリだった。
「A遅いよ！心操の試合始まっちゃうよ！」
「うわあ、ギリギリ。危なかったあ…」
ここまで一緒に勝ち進んできた唯一のクラスメイトの試合を見逃すわけにはいかない。
爆豪くん(あのあと脅されて呼び方を変えた)と話をしていたおかげ(せい)で、試合前の人使くんに声をかけることができなかった。
会っていたからといって、気の利いた言葉をかけられる保証はないけれど、『君はヒーローだよ』ってもう一度言えたらよかった。
その想いが今からでも伝わるように両手を握りしめる。がんばれ、人使くん……！
人使くんの第一試合の相手は、あの緑谷くんだ。彼は個性だけじゃなくて心も強いから、個性がちゃんと効くか心配なところではある。
「あの緑の彼、最初の種目1位だった子だよね。」
「うん……強い子、だよ。」
隣にいる由香にも伝わってしまうんじゃないか、というくらいに私が緊張していた。
ルールは単純なものだ。相手を場外に落とすか行動不能にする、または『参った』とか言わせても勝利となる。イカサマとかできない超シンプルなルールだな。
音声は開通されないから内容まではわからないけれど、スタートがかかる前から2人で喋っている様子が伺える。
「レディー、スターーート！」
駆け出そうとした緑谷くんの身体がピタリ、と止まったかと思えばそのまま踵を返して場外へと歩みを進めていく。
彼に何をしたの、人使くん…。あの緑谷くんをこんなに簡単に攻略できるとは思わなかった。
それに、A組には尾白くんがいるから人使くんの個性は緑谷くんにすでに伝わっているはず…。
「すげえぞ心操！何してんだー！！」
「いけ！心操っ！」
理由は何にせよ、こうなって仕舞えば人使くんの勝ちは確定だ。衝撃を与えれば洗脳は解ける、と彼が教えてくれたことがあった。
緑谷くんがもしそのことを知っていたとしても、一対一のこの対決ではその方法を取ることはできないだろう。
会場全体が息を呑んで見つめる。いけっ、このまま…！
その瞬間。場外に向かっていた緑谷くんから暴風が巻き起こる。
「っ…え？」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 92人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：浅葱。 | 作成日時：2021年5月25日 15時
