もしもの話。【僕のヒーローアカデミア】 (ページ45)

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４３. ページ45

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会場に辿り着くと、一番最初に見慣れた紫頭を見つけた。そっと駆け寄って隣に立つ。

「……ん？」

焦凍が、こちらを見つめていた。目が合ったので首を傾げてみると、途端に目を逸らされてしまった。あからさまな態度に少し傷ついたけど、もしかして見ていたのは私ではなかったのかもしれない。

人使くんが気になっているのだろうか。さっき目立ってたもんなぁ。

「…あの、すみません。俺、辞退します。」

とうとうくじ引きが始まるというときに手を挙げたのは、…尾白くんだ。

ここからじゃ距離が遠くて聞こえないけれど、責任感の強そうな彼のことだから騎馬戦中の記憶がほぼないから、とかが理由だろうか。

ちらりと人使くんに視線をやると、表情を変えずにじっと足元を見つめていた。

尾白くんの気持ちも、分からなくはない。自分が戦って勝ったという記憶が無いのに、勝ち上がったことになるなんてプライドが許さないのだろう。彼なら他の皆が必死の思いで頑張って掴み取ったのに、とも言いそうだ。

同様の理由でB組の庄田くんも辞退を申し出たところで、幾つかの視線が私にも刺さっていることに気づいた。

…A組の数名は、私の存在を知っている。そして、大体の人が個性がなんなのか正体がわからないままだ。こんなことになってしまって良い気持ちにならないのは、当然のことだろう。

尾白くんと庄田くんの辞退は、人使くんと私のせいだと思っていることだろう。それを表しているのがこの視線たちだ。

責め立てられるのも無理はないし、まぁ…事実ではあるけれど、どうしようもなく逃げ出したくなった。

「庄田、尾白の棄権を認めます！」

ミッドナイト先生の審判(私情？)により、2人の棄権が認められた。

「…Aのせいじゃない。個性をかけたのは俺だ。」

人使くんが静かに、呟く。恐らくその場にいた誰にも。いや、私以外誰にも聞こえていないだろう。

どうしてそうやって、全部持っていってしまおうとするのだろうか。きっと彼は私のことも案じている。…私がこういう考えに陥って、個性の効力が弱まってしまうのを防いでくれようとしている。

「人使くんは、どこまでもヒーローだね。」

こっそりと耳打ちすると、彼は表情を変えずに頷いただけだった。

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