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凍てつくような空気の正体は、これだ。焦凍がこの話をしようとしているからか、と全てを悟った。
「
俺をオールマイト以上のヒーローに育てることで、自身の欲求を満たそうってんだ。」
思わず私の手にも力が入る。なんとも言えない焦燥感にかられていると、私の口を塞ぐバクゴウくんの手も密かに震えた気がした。…君でも動揺することってあるんだね？
「…記憶の中の母は、いつも泣いてる。お前の左側が醜いと、母は俺に煮湯を浴びせた。」
「
全てが、フラッシュバックする。
冷さん…焦凍のお母さんは、優しいお母さんだった。焦凍の頭を撫でる冷さんの笑顔は本当に優しくて、羨ましく思ったのを覚えている。勿論、焦凍の幼馴染でもある私にも優しかった。
"焦凍とAちゃんは双子みたいね" そう言って、私にまで自分の子供のように愛を注いでくれた。
そんな冷さんが、焦凍に煮湯を浴びせるなんて私には信じがたかった。それは、焦凍も同じだったんだろう。まさか、実の母親に火傷を負わされるとは。
火傷をした後の焦凍は一変した。穏やかだった表情は常に強張っている。笑顔がとても可愛かったのに、笑わなくなった。私が冗談を言って戯けても、返事をくれなくなった。
あんなに同じ時間を過ごしたのに、当時の私は焦凍に何もしてあげられなかった。あの時、もっと何かしてあげられていたら、今の焦凍はこんな
今頃、焦凍と緑谷くんは、決勝も頑張ろうねって笑い合えていたのかもしれない。…私は、何もできなかった。
「時間、取らせたな。」
その場から2人がいなくなると同時に、身体の力が抜けてしゃがみ込む。
「…テメェは、知ってたんだろーよ。」
「……知ってるよ。」
「じゃあ、なんで泣いてんだよ。」
なんで私が泣いているか、そんなの私にだって分からなかった。後悔か、残穢の気持ちか、…向き合うのが怖いからなのか。
「ごめんバクゴウくん、…じゃあ決勝も頑張ってね！」
涙を拭い彼に笑顔を向ける。焦凍にはこんな顔じゃ会えないし、おめでとうを言うのは、全部終わってからにしよう。
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作者名：浅葱。 | 作成日時：2021年5月25日 15時
