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「ああぁどうしよう、緊張する…」
控室の机に座り突っ伏しているのは、私だ。
改めて自分の心が弱っちいことを痛感する。心臓がすごいスピードで動いているし、それが頭に響くおかげで私の緊張はピークに達している。
「大丈夫だよ〜、Aなら。」
「よしよし、チョコお食べ。」
横でみんなが慰めてくれて、申し訳なさと嬉しさでぐちゃぐちゃになる。杏ちゃんがくれたチョコレートを口に含むと、甘ったるさのおかげで少し落ち着いた。
「入場だってよ〜。」
クラス委員長の気怠げな声に、みんなのそのそと腰を上げる。このやる気ムードの欠片もないクラスの中で緊張しているのは私と…彼くらいだ。
「人使くん！」
視界の端に入った紫頭に駆け寄る。緊張、してるだろうな。いつもよりも表情が強張っているのがわかる。私に気づくと、しっかりと先を見据えて言った。
「俺は負けないよ。ヒーロー科にも…もちろん君にも。」
「私も負けないよ！…いい体育祭にしようね。」
こつんと拳同士を合わせると、彼からのエネルギーがどんどん流れてくる気がした。私も、同じように与えられているだろうか。
私は、ここで絶対に勝つんだ。みんなにも、A組の怖い人にも、人使くんにも、…焦凍にも。
勝って、ヒーロー科に行って、私だって最高のヒーローになるんだ。その先を、見据えられるように。
「どうせあれだろぉ、こいつらだろ！敵に襲われたにも関わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星！
ヒーロー科！1年A組だろォ！」
突然聞こえた耳を劈くような歓声にバクバクと心臓が跳ねる。さすがA組だ。マイク先生のナレーションももちろんだけど、歓声がその期待値を表している。
「続いて普通科、C・D・E組！」
会場に一歩踏み入れると、360度刺さる視線。でもそのどれもがヒーロー科に注がれていることはすぐにわかった。
「俺らって、完全に引き立て役だよなぁ」
「…だるいよねぇ。」
前方でそんな声が聞こえた。ポジティブに考えろ、私。目立つはずのない普通科が良い成績を収めれば、それだけで話題に上がりやすくなる。プロヒーローの目に止まる機会も増えるだろう。
「宣誓。俺が1位になる。」
A組の怖い人がヘイトを集めまくるような宣誓をした。周りの生徒はガヤガヤと文句を垂らしていたけど、私のやる気はそれにより掻き立てられた。
…この人にも、絶対に勝つ！
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作者名：浅葱。 | 作成日時：2021年5月25日 15時
