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焦凍Side.
USJ事件の後、特に怪我もなかった俺は、行きと同じようにバスに乗り込み、教室まで送り届けられた。
教室はお通夜のようだったが、身を挺して
放置したままだったスマートフォンには、幼馴染から連絡が入っている。不謹慎だが、無視をされていた相手からの連絡に、素直に嬉しいと思ってしまった。
心配をするメッセージに対し『大丈夫だ。』と返す。今度こそすぐに既読でもつきそうなものだが、期待通りには行かず、また音沙汰無しだった。
担任不在のまま解散となった俺たちは、各々の想いを胸に帰路につく。昇降口に向かう途中、ふとC組の教室に人影が見えた。
見間違えることはないだろう。
そこには誰もいなくなった教室で1人、机に伏せている幼馴染がいた。
「A、寝てんのか…？」
近づいてぽん、とその背中を撫でる。隣の空いている席に腰掛けながら、すうすうと寝息を立てて眠る顔を覗き込んだ時だった。
「りん、…ね、……」
昔の夢でも見ているのか？俺ではない奴の名前を呼びながら、頬には涙が伝っていた。
この名前は、久しぶりに聞いたな。確か、Aのもう1人の幼馴染だ。
俺の知らないところで、いつも助けてもらってるんだ。優しい子なんだと、幼いあいつは笑っていた。
個性がわかった時、絶望しかないような顔をしていたあいつを思い出す。「こんな個性なんかなければ…っ！」と泣き喚くこいつを、初めて守りたいと思った。
もう1人の幼馴染の話をするあいつの顔は嫌いだった。幼心に、俺がこいつを守っているもんだと思っていたから、"俺だけではない"ことが悔しかったのだと思う。
溢れる涙を拭うように頬を撫でる。昔と変わらず柔らかな肌も、長い睫毛も、俺が。
「A起きろ、帰るぞ。」
「…ん、焦凍………？焦凍っ…！」
ふわり、と甘い香りが広がる。気づけば俺は、Aの腕の中に居た。
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作者名：浅葱。 | 作成日時：2021年5月25日 15時
