もしもの話。【僕のヒーローアカデミア】 (ページ3)

今日:19 hit、昨日:0 hit、合計:102,085 hit

１. ページ3

・

肺に酸素をいっぱい取り込んで前を向けば、
我が家の外壁に寄り掛かった幼馴染と目が合った。

「遅いぞ。」
「ごめんごめん、ちょっと寝坊しちゃった。」

彼、轟焦凍は待ちくたびれたとばかりに不機嫌そうだ。
それでも私の登場を待ち、今でも横に並んで歩いてくれるのは、幼馴染の責任感…いや、彼の優しさだろう。

「あーあ、中学はずっと同じクラスだったのに、
とうとうバラバラの生活かあ。」

見慣れないブレザー姿の焦凍をちらりと見遣る。中学はずっと学ランだったから新鮮だ。
いつの間にか抜かされてしまった背丈。
春休みを迎えた頃から鍛錬に磨きをかけたのか、より逞しくなった身体に思わず見惚れてしまった。

そして何より、私の幼馴染はイケメンだ。

端正な顔立ちにサラサラの紅白髪。
グレーとエメラルドグリーンのオッドアイは見るもの全てを吸い込んでしまいそうなほど綺麗…。
と、贔屓目に見ても超ハイスペック男子だ。

それに加えて今日から雄英高校の制服を身に纏っている幼馴染は、完全に道ゆく人の視線を奪っていた。

さっきからチクチクと刺さる視線が痛いな、と思いつつ、再び綺麗な横顔に目を向ける。

「そう、…だな。」

ああ、先ほどの返答だろうか。
いつも感情を顔に出さない彼が、少し眉を潜めたのがわかった。

気にしているのだ、私のことを。
また、気を使わせてしまった。

「や、やだな。そんな顔しないでよ！大丈夫だよ、私、楽しくやるし。」

咄嗟に出た笑顔は、私の得意分野だ。
こうすればうまくやり過ごせることを私は知り得ていた。
未だ納得していない様な表情を浮かべる幼馴染を他所に、辿り着いたクラス表示へと身体を押しやる。

ヒーロー科である彼の名前は、自分の名前よりも先に目に入った。
A組。やっぱり焦凍はすごい。推薦入試でかつA組なんて、どれだけ優秀なんだ。

…C組、か。
当たり前ではあるがいつも同じ欄にあった名前がないことにショックを受けてしまった。
知らない名ばかりの掲示板にため息をつく。

「焦凍、私C組だった!じゃあ、またね。」

人混みの中でふわりと手を振り、
眩しすぎる場所から逃げる様に遠ざかった。