。流星の絆。2 (ページ38)

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"うわ、びっくりしたぁ!"

古びたドアを開けると……びっくりしたように振り返るカウンター席に座ってる女の子。

黒い髪が揺れる中…彼女の瞳から涙がこぼれたのが分かった。

泰輔「…A?」

そしてその女の子が…俺たちの妹だということも。

「泰、にぃ…なんでいるのっ?」

目を擦りながらそう聞くA。

泰輔「いや、お前こそ…」

そう聞いたときに、彼女の後ろにお弁当があるのを気づいた。

泰輔「弁当?……え、ハヤシライスじゃん」

俺がそういうと、怒られる子供のように体を縮めるA。

泰輔「…ここで食う父ちゃんのハヤシライス…うまいだろ?」

そんなAの頭に手を置いて優しくなでながら言うと…彼女はふるふると首を振った。

泰輔「あ、これ父ちゃんのハヤシライスじゃなかった?」

俺がそう聞けばまた首を横に振る。

「…わかんないもん、」

泰輔「?何が?」

「……ここに来れば…お父さんたちとのこと…思い出すかと思って。
でもっ…全然思い出せなくてっ…ハヤシライスだってっ…しずみたいに懐かしい気分にならなかったっ」

ぽろぽろとまた涙を零す彼女を見て…俺はぎゅうっと胸が苦しくなった。

そうだ。事件の時…彼女は幼かった。

シーでさえ…思い出はあやふやなのだ。

だったら…

泰輔「…ごめん」

ぽろっと出ていた言葉に…Aは驚いたように顔をあげた。

しっかりしてて…周りを見てる彼女は…言い出せなかったはずだ。

仇を取りたいと言っている俺たちに…"覚えていない"など。

「泰にぃが謝らないでよっ…」

きっと情けない顔をしているんだろう。

泰輔「おれ、兄貴なのに…」

兄貴は長男として弱音を見せない。

でも…そんな兄貴もAには…頼っていた。

俺は…そんな2人に頼りっきりだ。

シーにだって…頼ってばっかり。

「泰にぃは自慢のお兄ちゃんだよ」

"どこが"とちゃんと表さないのが…多分きっと彼女の優しさ。

兄貴のいいとこや悪いところと比べるわけではなく…ただ私の自慢のお兄ちゃんだよ。

…ほんとに俺は情けない

兄貴にも…Aにも…シーにも頼りきってばっかりだ。