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Hiiragi.side



「..そんなに辛いんですか?」


準備室の扉を閉めた諏園は、伺うように聞いてくる。





柊「いや..もう大丈夫だ」




未だ心配そうな諏園は、不意に視線を俺の横に移す。



「あ..文香ちゃん..」



ぱたぱたと近寄ってきて、画面を嬉しそうに見つめる諏園。




柊「お前は本当に文香が好きなんだな」


「うん。だってお姉ちゃんみたいなものだもん」



無邪気な笑顔は



初めて出会った頃には想像出来ないほどの眩しさ。




何かを思い出したという表情をし、1歩俺から離れた。




「..計画通りだったんですか?」




後ろに手を組んで、先程とは違う笑みを浮かべて聞いてくる。




「私に協力を持ちかけてきたのも。
..フェイク動画の撮影者が里見で..里見は私が好きだったことも。
全てわかった上での..計画だったんですか?」



柊「..あぁ。
お前も3年A組の生徒だからな」




この授業に関係ない生徒はいない。






「酷いですね」



柊「それはどのことに向けてだ?」



ビクりと、肩を揺らす。




昨日泣いて悲願してきた、諏園が脳裏に過ぎる。






「..澪奈の思いってなんですか」



柊「言っただろう。それを逃げずに受け止めるのがお前の課題だと」



きゅっと小さな口を悔しそうに結ぶ。





柊「A。」



俺が名前を呼べば、彼女は瞳を揺らす




「..先生は..」



柊「ん?」


「一颯くんは..死にませんよね..?」






"あいつはお前を失うことを1番恐れている"



"せめて..今この時間だけでも..素直にさせてやってほしい"



"素直になってほしい"








五十嵐さんの言葉が俺に叫ぶ。



実の娘のために、こんな俺に手を貸してくれた彼の言葉が。



..娘代わりのAのことを、大切に思ってる彼の言葉が。






柊「あぁ、安心しろ」


手を差し出すと、そっと自分の手を乗せる。



柊「俺はお前を置いてったりしないよ」



頬を撫でると、安心したように口元を緩ませる。



じっと、熱を帯びた視線が俺を見つめてきた。





若さ特有の試すような視線。



「せんせ、」





ガラスのように繊細な彼女



割れないように優しく触れると、ふわりと嬉しそうに笑う。



「やっぱりリップは持っといた方がいいですよ」



ポケットから取り出したリップをひと塗りすると



柊「..どこで覚えたそんな技」




そっと、おれの唇に触れた。





悪戯っぽく彼女が笑った。

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ikumina4(プロフ) - mori48360616さん» ああありがとうございます!! (2019年4月4日 0時) (レス) id: 9fb0864149 (このIDを非表示/違反報告)
mori48360616(プロフ) - 石川くんじゃなくて石倉くんですよ!いつも読ませて頂いてます! (2019年4月3日 2時) (レス) id: 907c0ca260 (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとタメでごめんね (2019年3月19日 20時) (レス) id: a31ea93868 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽかぽか笑顔 | 作成日時:2019年3月17日 23時

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