55.屋上 ページ7
後ろから大きな鬼がドスンドスンと音を立てて追いかけてきている。
肩、痛いはずなのに…なんで…
私…また乃木に迷惑かけちゃった…
やっぱり、私…
"それに俺は頼られたいタイプなんだけど"
気分を沈めているとふと乃木の言葉が脳内で再生された。
見上げてみると真剣な表情の乃木が私の目に映る。
それを見て、無意識に拳に力が入った。
そうだ、私がやらなくちゃ。
乃木が私を助けてくれたように、私が竜くんを助けないと…！！
A｢乃木っ…屋上…！｣
それだけ言うと、乃木は目を合わせてから笑って階段を駆け上がった。
乃木の服を掴んで、目を瞑ってこれまでの竜くんとの思い出を振り返る。
竜くんは、覚えてるかな。
私と竜くんが1番最初に出会った場所…
ガシャンっと扉が開く音がした後、目を開けると夜空には満月と綺麗な光が広がっていた。
乃木｢A｣
何か策があるんだろ？
まるでそういうかのように乃木が名前を呼んできた。
私は頷いてから乃木に降ろして貰い、扉に向かい合うようにして1歩前に出た。
竜｢逃 が さ な い。
逃 が さ な い ！ ！｣
鬼は扉や壁を破壊して姿を現した。
A｢逃げないよ、竜くん｣
竜｢A…A…！｣
鬼は大きな手で私を掴んだ。
その力が強くて、圧迫されて、苦しい。
これ以上強くなったらきっと私は押し潰されて死ぬ。
乃木｢A！！！｣
A｢っ…てる…？
おぼえ、…てる…？｣
声を絞り出して聞くと、鬼は目を見開いた。
A｢屋上…ここじゃ、ないけど…
私と、竜くんが…友達になった場所だよ…！｣
竜｢ぁ…ぁ…ああ…？｣
手の力が弱まっていく。
そう、屋上。中学生の頃、私は乃木の事しか考えてなくて、その上人を信用出来なくて…そんな友達もいない私に竜くんは声をかけてくれた。
A｢君、AAさんだよね。僕、鬼灯竜って言います…って。私、覚えてるよ｣
目を見て言うと、鬼は瞳を震わせた。
最初は興味本位だと思ってた。
"なんで1人なの？""友達作らないの？"そんなことを聞いて離れていくんだろう、と。
でも、竜くんは違った。
ずっと私と居てくれた。
私は目の前にいる"竜くん"の左手を取って、口元に近付けた。
A｢私、竜くんと出会えてよかったよ｣
竜｢…！！｣
ガブッと私は竜くんの指を噛んだ。
乃木｢……は？！｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：霊来 | 作成日時：2023年8月2日 13時
