54.憑かれてる私と見えない君 ページ6
竜｢乃木修一だからこそ惹かれた部分…？
僕と乃木修一はそんなに違う…？僕はこんなにも君を愛してるのに…｣
竜くんは声を震わせて俯いている。
A｢……私と、乃木だから｣
竜｢は、？｣
A｢憑かれてる私と、見えない乃木だからだよ｣
私は笑ってそう答えた。
それでも竜くんは納得いかないという顔をしている。
A｢私が"見える"から"見えない"乃木に惚れたんだと思う。でも、乃木のいい所をもっと沢山知って…私はいつの間にか乃木の事が大好きになってた。
乃木は私の全てなんだよ｣
本人の前で改まってこんなことを言うなんて、我ながら恥ずかしい奴だなと思えてくる。
でも、これが紛れもない私の本心だ。
竜｢………僕が、もし"見えない"人だったら…僕のことを好きになってくれていた…？｣
A｢…もしそうだったとして、竜くんはちゃんと"私"を見てくれていた？｣
竜｢っ…？｣
竜くんは目を見開いた。
私自身この言葉に深い意味はなかった。けど、竜くんの反応からして思い当たる節があるんだろう。
竜くんは1人でぶつぶつと何かを呟いている。
そうだ、逃げるなら今のうちに逃げないと…
そう思って振り返ると、乃木は片手で口元を押さえながら私のことを見ていた。
A｢…乃木？｣
乃木｢…んや、なんでもない。この嬉しさに浸るのはやることやってからだな｣
乃木はよっこらせとその場に立ち上がった。
ふと視線が乃木の肩へと向く。
痛々しい傷から血が流れているのを見て、私の胸は罪悪感でいっぱいになった。
乃木はそんなに動けないから、私が守らないと…！
乃木｢じゃあ＿＿｣
竜｢逃 が さ な い｣
竜くんとは思えない低い声がし、振り返るとそこには"鬼"がいた。
私の何十倍も大きい、鬼…。
私が唖然としていると、いきなり足に鋭い痛みが走った。
足元を見ても特に何も…
A｢…え｣
床から生えている腕が、私の足首を握っていた。
その力が強くなって、更に痛みが増していく。
乃木｢A、逃げ…｣
A｢ぁ、…乃木…｣
足が痛くて動かせない。
手を解こうにも握る力が強すぎて…でもだからって今の乃木に神力を使わせるのは…！
瞬間、ふわっと体が浮いた。
気付けば天井と乃木の顔が……って、え？
乃木｢走るぞ！｣
A｢なっ？！！｣
乃木は私をお姫様抱っこした後、すぐに走り出した。
ーーー
スランプ…
ーーー
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作者名：霊来 | 作成日時：2023年8月2日 13時
