52.本心 ページ4
A｢留学だって、本当の理由は私から離れるためだったんでしょ？
だから私に言わないでどっか行って…なのに私は追いかけてきて…乃木からしたら気持ち悪かったでしょ。｣
…まだだんまり。乃木は、何か言う事ないの？
私、乃木の考えてることわかんないよ。
A｢…もう、隠さなくていいよ。全部知ってるから…帰っても、私、なんとも思わないから…！
…嘘でも、罪滅ぼしだとしても、守るって言ってくれて…嬉しかった…。沢山我慢させて、迷惑かけて…ごめんね…｣
竜｢Aもこう言ってるんだし、さっさと家に帰って忘れて寝ときなよ。さ、A…おいで｣
何も言わない乃木を見てから、私は竜くんの方を向いて足を進めようとした。
その時だった。
乃木｢言いたいことはそれだけ？｣
さっきまで黙っていた乃木が、やっと口を開いた。
私が振り返ると、乃木は呆れたように笑っていた。
A｢…なに、｣
乃木｢あのなあ、俺は無理してAと居た事なんてねーし気持ち悪いとも思ってない。
我慢とか迷惑とか…そんなんAもしてんじゃん？それに俺は頼られたいタイプなんだけど｣
A｢……は…？何言って…｣
乃木｢守るって言ったろ？
とにかく、俺はそんなこと思ってねーからな。｣
乃木の赤い目が私をジッと捉えている。
その目に、嘘が混じってないことくらい分かってる。
でも、それでも…
A｢……ない…｣
乃木｢…？｣
A｢分かんない、よ…！乃木が私のことどう思ってるのか…分からない…！乃木にとって私って…なんなの…？｣
どうしてそんなに、手を差し伸べてくれるのか。
私って、友達としてそんなに価値あるの？
分からない。乃木にとっての自分が、分からない。
竜｢…A、それ以上そいつに聞いても無駄だよ。だから…｣
乃木｢A｣
乃木の声が、頭の中で響く。
近いからなのか、乃木の声がいつもよりしっかりと聞こえる気がする。
乃木｢…左手、出して｣
竜｢は…？｣
乃木の視線は私の左手に向けられている。
私は疑問を持ちつつも、素直に左手を差し出した。
すると乃木は薬指だけを立たせる形にしていた。
乃木｢ちょーっと痛いかもだけど、我慢してろよ〜｣
A｢え、何して…｣
乃木は私の腕を掴むと、ゆっくりと自分の口に薬指を近付けた。
竜｢やめろっ！！｣
その時、乃木はニヤッと笑った。
ガリッ
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作者名：霊来 | 作成日時：2023年8月2日 13時
