ひと口どーぞ月島君！3 (ページ9)

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試合が始まって、今は1セット目の序盤。

スターティングは私の情報通り。
まさにセッター対決って感じで、うちは想像以上な徹の派手な攻撃に面食らってる。

そして、まだ3 - 4で青城がリードしてるのに、徹がタイムアウトを要求した。

会場はザワついてて、嶋田さん達も変な顔してる。
これはもしかして……。

「サインに気付かれたかも。」

「サイン？」

菅さんが考えてくれた速攻と変人速攻の使い分け。
『くれ』と『来い』

伊達工にはバレなかったけど、徹は試合前に相手のビデオ見てたらするから。

「それってヤバいんじゃねぇの？」

来るってわかってるなら、コミットブロックで簡単に止められちゃうし、囮にならない。

なによりも、

「飛雄が焦らなきゃいいですけど……。」

少しの不安を抱えて、試合再開。
日向のレシーブミスで勇ちゃんのサーブ。

ジャンプサーブじゃないのに2本連続でサービスエース。
後衛セッターが出てくるところを狙われてる。

やっぱり向こうが1枚上手だな……。

今は4点差。
徹が前衛に上がってきて、飛雄の焦りがこっちにも伝わってくる。

上がったレシーブの下に入った飛雄は、明らかにツーのモーション。
あっ、と声が洩れた時には徹のブロックが決まってた。

「落ち着いてー！」

私が叫んだの、聞こえてるかな？

前衛に日向が上がってきて、田中さんと2人のハイテンション。
萎縮はしてなさそうだけど。

日向の攻撃に対して、勇ちゃんがブロックのタイミングを合わせてきた。
これはたぶん本当にバレてる。

飛雄のサーブに備えてた守備の前をついて乱れたボール。
普通ならチャンスのはずなのに、徹は簡単には許してくれない。

飛雄にファーストタッチさせて、攻撃の幅が狭まったところをブロック。
試合の慣れ方が違う。

「ここで及川のサーブかよ……！」

1本目をノヤっさんが上げたから、徹の狙いはもう移ってるはず。

豪速球のサーブの先には、田中さん。
弾かれたボールが床に跳ねる。

と、ここで烏野のタイムアウト。
対応は早めにってことか。

でもそんな対応、徹は慣れっ子。

タイムアウト終わって、田中さんが何とか上げたボールも、勇ちゃんがダイレクト。
その後もブロックに阻まれて、3点連続青城。

2回しかないタイムアウトを使い切ってしまった。

『叩くなら折れるまで』

田中さん……！

その時、破裂音と共に、田中さんが両頬を自分で引っ叩いた。