ひと口どーぞ月島君！3 (ページ20)

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「何でこんな基礎的な知識すら入ってないの？」

さっそく蛍に勉強を見てもらっている放課後。

明日の授業で小テストがあるから、化学を教えてもらってるんだけど……。

「授業中何してるわけ？逆にこんな問題が解けなくて、よく今までの小テストやってこれたよね。」

「それが……やってこれてないんです。全部の小テスト……10点前後なんです。」

頭を抱えて深くため息をつく蛍。

「授業中はちゃんと起きてたんだよ。ノート取ったし、説明だって頑張って聞いたんだけど、わかんないから集中切れちゃって……。」

「ノート見せて。」

板書が取られたページを開いて蛍に渡す。
午前中の数学の授業のもの。

心を入れ替えて、ノートだけはしっかりとった。

「あっ、そっちは……。」

「何この落書き。」

蛍がめくったページにはケーキの絵がびっしり。

「……。」

今日とったノートの前にはまともな板書が一枚もない。

あきれ顔の蛍の視線が痛い。

「こんなことしてるから基礎が入ってないんでしょ。それで急に授業聞いても、理解できないのは当たり前だし！」

おっしゃる通りでございます。

「でも今さらどうやって基礎の勉強したらいいのかわかんないの！！蛍たすけて〜！！」

泣きつく私を面倒くさそうな顔で見る蛍。
一日数十分って約束だったけど、たぶんそれだけじゃ私の頭はどうにもならない。

「このままじゃ私、潔子さんに顔向けできないよ！！」

「何で清水先輩が出てくるの。」

「新しいマネージャーの勧誘は私がやるから、Aちゃんはテスト勉強頑張ってって。なのに赤点とって合宿に行けないなんて潔子さんに申し訳なさすぎるよ！！」

潔子さんこそ、受験勉強だってあるのに、私の頭が悪いせいで迷惑をかけてしまっている。
絶対に赤点を取るわけにはいかないんだ。

また蛍が深いため息をつく。

「とりあえず、公式とか化学式の暗記は自分で何とかしなよ。その後のわかんないところは見てあげるから。」

蛍は、今日の私の板書をしばらく眺めた後、いつもより少し優しい目で言った。

「ほんと！？ありがとう！！」

「今後授業はちゃんと聞いて、ノートは全部取って。そうじゃないと教えないから。」

「うん！ちゃんとやる！」

やる気満々に私が答えると、珍しく蛍は少しだけ笑った。

いつもみたいにバカにした笑いじゃなくて、自分の体温が上がったのがわかった。