ひと口どーぞ月島君！3 (ページ18)

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「で、例の東京遠征ですが。」

部活終わりのミーティング。
当面のスケジュールを確認していた。

直近で一番気合が入るのは、やっぱり東京での合宿。
みんな無意識に前のめりになる。

「学校からの承諾も基本的には(・・・・・)大丈夫。ただ＿＿」

武ちゃんの顔がいつになく真剣だ。

わくわく顔だった私たちも、違和感を感じて武ちゃんの言葉に耳を傾ける。

「来月になったら、期末テストあるのわかるよね？」

「「「………。」」」

不穏な言葉が聞こえた気がする。

「わかるよね？」

武ちゃんの視線が私を含めた数人に突き刺さっているのを感じて、自然と目線を逸らした。

「予想ついてるかもしれないけど、赤点で補習になる教科がある場合、遠征は物理的に無理になります。」

アカテン、ホシュウ……？

「縁下捕まえろ！」

反射的に走り出した田中さんとノヤっさん。

「あかっ赤点て！何点ですかっ！？」

見るからにうろたえる日向。

「影山が息してません！」

現実から逃げた飛雄。

私？私は＿＿

「あはっあはははは……」

笑うしかないじゃないですか。

中学まではそんなに厳しくなかったし！！
赤点って言っても留年するわけじゃないし、何とかなったし！

「そんなこといきなり言われたって無理に決まってるじゃん！！」

「いきなりじゃないデショ。授業中にも再三言われてるよ。君はどうせ聞いてないんだろうけど。」

薄ら笑ってる蛍。

「ど、どうしよう蛍！」

「勉強すればいいじゃん。」

わかってない。蛍は何もわかってない。
勉強して何とかなるなら私は青城に通ってるはずだし、飛雄も白鳥沢に通ってる。

頑張ってもできないものはできないんだよ。

さようなら、私の楽しい合宿。憧れの東京。

「おいお前ら菩薩顔ヤメロ！諦めてんじゃねぇよ！」

体育館の中は大騒ぎ。

楽しそうなのは高みの見物の蛍だけだ。

「狼狽えるな！！！」

大地さんの声に皆が顔を上げた。

「やってやる…全員で……東京行ってやる……！」

そう決意する大地さんの目は恐ろしいほど据わっていた。