ひと口どーぞ月島君！3 (ページ16)

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「蛍ごめん、私今日行くところあるから1人で帰るね。」

部活が終わって、いつもなら更衣室に行くけど、今日はジャージのまま帰る準備をした。
合宿の話で気合が入っていたせいか、気付いたら8時を過ぎてた。

「もう結構暗くなってるんだから、大人しく帰りなよ。こんな時間にどこ行くわけ？」

「公園！」

靴を履きながら答えた私を、蛍は何とも言えない呆れた顔で見る。

別にとち狂ったわけじゃないよ、本当に公園に用があるんだから！

「たぶん、徹達がいると思うから。」

3人でよくバレーしてた公園。
試合に負けた後は、2人ともよくあそこにいる。

「はぁ……知らない人に話しかけられても付いて行ったらダメだから。」

私は幼稚園児か！
さすがに心外だったから、返事はしないで走り出した。

「また明日！」

「後ろ向いて走れるほど器用なわけ？」

挨拶だけはしたのに、また嫌味で返してくるのが蛍だ。

…………………………………………………………

「汗冷えたら風邪ひくよ。」

「……A。」

予想通り、いつもの公園でブランコに座っていた2人。

「あぁ……悪りぃ、連絡しねぇで。」

「ううん。お疲れ様。」

鞄から取り出した蜂蜜レモン。
それを受け取った徹は、1人で抱え込みながらすごい勢いで食べ始めた。

もちろん怒るはじめちゃん。

「てめぇ、1人で食ってんじゃねぇ！」

「岩ちゃんは練習試合の時食べてたじゃん！！」

悔しさと一緒に飲み込んで、明日はその分強くなる。
試合で負けるたび、この公園からもう1回歩き出すのが私達なんだ。

「次はうちが勝つから！」

「はんっ！全部勝って全国に行くのは俺達だかんね！」

聞かなくてもわかってる。
2人は春高までバレーを続ける。
きっとその先も、もっと先も。

だってバレーばかだから。

「久々に3人でバレーしよ！」

「いいじゃん。泣くなよA！」

「よし、及川泣かすぞA。」

夜遅くに制服汚して帰って、ママにいっぱい怒られたのは、2人のせいにしとく。