ひと口どーぞ月島君！3 (ページ14)

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6月3日 IH宮城県予選3日目(最終日)

私の周りはいつも通り。
お店も、教室も、授業も、クラスメイトも。
違うのは後ろの席の飛雄だけ。

いつもと違って絶対起きてる、なのにピクリとも動かない。
昨日試合に負けて、皆抜け殻状態だった。

心に穴が開いたみたいな感覚は、中学時代から何度も経験してきて、そんな選手達を何度も見てきた。

でも、何度目だって悔しいし、慣れない。

4限目の体育だって、いつもならかんかんと暴れまわってるのに、今日は隅で飛雄と2人。

昼休みを告げるチャイムが鳴ると、着替えもせずに飛雄はどこかへ行ってしまった。

体育館、かな。

更衣室に向かうクラスメイトの流れの中で、私はまだぼーっと座っていた。

「Aちゃん、ご飯は？」

「あ、ごめん。2人で食べてて。」

不思議そうな顔をするタマちゃん。
気力のない体を奮い立たせて立ち上がり、反対方向へ歩き出す。

行き先は体育館。
くよくよなんてしてられない。
マネージャーが選手を支えなくてどうする。

なんだか奇声が聞こえる気がする。

私が体育館に着いた頃には奇声は止んで、扉の前に潔子さんがいた。

「潔子さん。」

「Aちゃんも心配で見に来た？大丈夫、日向達ならちゃんとご飯食べるように言っといたよ。」

やっぱり先輩は私より仕事がお出来になるようで。
気丈で美しい潔子さん。
3年生はこれで引退したりしないよね……？

「大丈夫。春高、一緒に行こう。」

私の不安が顔に出てたのか、潔子さんは優しく笑って言ってくれた。

「はい！」

「お昼まだだよね。相談があるんだけど、一緒にどうかな？」

「もちろんです！お弁当取ってきますね。」

潔子さんをお待たせするなんてできず、一目散に教室まで走った。

よく考えたらまだジャージのままだし、まず着替えなきゃいけない。

行き先変更、更衣室へ。

扉を開けると、まだ何人か着替えていた。

「A復活？」

「おうともよ！」

「なんかスマホ鳴ってたよー。」

言われてスマホを開くと、はじめちゃんから。
行ってきます、って決勝のことだ。
もう始まってるかな。

試合中に返信しても仕方ないけど、応援してると返した。

1分で着替えて潔子さんのもとへ走る。

さっきまでの体の重さは、とっくにどこかへ消えた。