捌拾壱 ページ34
気持ちを伝えると、Aは少し意表を突かれたように固まった。
海と同じ色の瞳が揺れていて、少なくとも思いは届いたんだと思った。
「やっぱり伝えておきたくて。言わない方がいいかとも思ったんだけど、我慢できなかった。」
「ううん。嬉しいよ。」
綺麗に笑ったAは、何と言うべきなのか考えているようだった。
「いいよ、何も言わなくて。」
「でも……。」
「困らせたいわけじゃないから。ただ、知ってて。」
「……うん、ありがとう。」
まだ自分に自信はない。
むしろ、少しずつなくなっている気がするくらいだ。
けど、会えなくなるわけじゃない。
次会った時、その次会った時、積み重ねていけばいい。
「わっ。」
気付くと潮が満ちていて、つま先まで迫っていた。
慌てて荷物を持ち、波打ち際から離れる。
「サンダルで良かった。」
Aは少し濡れてしまったらしい。
「京治君は平気？」
「うん。だいじょう……！？」
部活のカバンを確認していると、赤い飾りがないことに気付いた。
Aがくれた匂い袋。
「切られたみたいな跡……。」
カバンに残った紐の切れ端を見て、Aが顔を固くする。
「ごめん、どこで落としたんだろ。確か一昨日の朝はあったはずだから……。」
冷静に考えようとしても、罪悪感と焦りが邪魔をする。
そんな俺を見て、Aは優しく何かを差し出した。
「これ、持ってて。」
それはAが持っているはずの、黒い匂い袋。
「中身は入れ替えちゃったから、お守りにはならないけど、私の代わり。」
「お守り？」
「あ、気にしないで。」
受け取ると、確かに硬い何かが入っている。
「何が入ってるの？」
「えっと……貝がら。」
少し恥ずかしそうに言ったAを見て、すぐにわかった。
告白した日に二人で拾った貝がら。
水色の貝を見つけた俺が、Aみたいだって渡した物。
「ありがとう、大事にする。でもちゃんと俺のも探すから。本当ごめん。」
「良いの良いの。京治君に持ってて欲しいし。」
その気持ちは嬉しいけれど、形見のような言い方をされると少し寂しい。
「もう夕日の時間か……。」
燃え上がる水平線を見つめて、Aが名残惜しそうに呟いた。
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noel(プロフ) - みおさん» ありがとうございます！ゆっくりのペースですが完結まで頑張ります！ (2022年3月21日 19時) (
レス) id: 546d15b4fb (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - ずっと更新待ってます！！！！！！ (2022年2月28日 23時) (レス) @page22 id: 861da81337 (このIDを非表示/違反報告)
noel(プロフ) - ゆきなさん» 不定期作品に付き合っていただいてありがとうございます！これからもよろしくお願いします^_^ (2020年7月19日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - これからも無理せずに頑張ってください！楽しみにしてます！ (2020年7月19日 16時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
noel(プロフ) - 苑歌さん» ありがとうございます^_^ 今後も頑張ります！！ (2020年7月19日 15時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：noel | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/noel_2/
作成日時：2020年7月19日 12時
