漆拾壱 ページ24
「A先輩は理系ですか？」
「はい。化学や生物学が得意なので。一年生はまだ文理分けされていませんよね？舞木君はどちらですか？」
「どっちもできますよ。憐って呼んでくださいよ、A先輩？」
いつの間にか壁と舞木君に挟まれていて、至近距離から見下ろされる。
「あの、少し離れて頂けますか？……憐君。」
名前を呼ぶと、漸く離れてくれた。
皆さんの前に居た時よりも距離の取り方が近い。
「A先輩って、セッターの方と仲良しなんですか？」
「京治君ですか？そうですね……仲は良いです。」
「何でも話せますか？」
「……いえ。」
なぜそんな事を聞くのか。
憐君は少し嬉しそう。
「じゃあ、あの先生ですか？」
「煉獄先生が、何か？」
「先輩の想い人。」
「どうしてそんな事を？」
「僕が質問してるんです。」
「一方的な男性は嫌われますよ？」
見つめ合ったまま沈黙が辺りを包む。
悪びれもせずに笑った憐君。
「すみません、不躾な質問でしたね。人の感情というのはあまり分からないんです。教えてくれる親が居なくて。」
魅力的なはずの笑顔に、私は好感を抱けなかった。
「気にしていませんよ。憐君もご両親がいないんですね。」
「まさかA先輩もですか？」
「はい。一年程前に亡くしました。」
思い出すと今でも胸が痛む。
前世でも今世でも、私に血の繋がった家族は居ない。
「辛いですよね、寂しいですよね。僕ならよく分かります。僕らは似た者同士なのかもしれない。」
「憐君……？」
様子のおかしい憐君を見て固まっている私を、彼は音もなく抱き締めた。
「一人ぼっちで、頼れる人も居なくて。でも先輩には僕が居ます。僕には先輩が居ます。」
正直、気味が悪い。
一般人なんて簡単に引き剥がせるはずなのに、上手く身体に力が入らない。
声色や言葉は、震える程の弱々しさや優しさが含まれているのに、腕は荒々しく、強く私を締め付ける。
「離してください。」
「あ、すみません。」
素直に離れた憐君は、既に気味の悪さを引っ込ませ、感じの良い笑みを浮かべた。
「分かってくれる人が居て嬉しかったんです。」
「私も貴方も、一人ではありませんよ。周りを見れば、大切な人はたくさん居ます。」
「……そうですね。」
一瞬、憐君の表情が曇った気がした。
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noel(プロフ) - みおさん» ありがとうございます！ゆっくりのペースですが完結まで頑張ります！ (2022年3月21日 19時) (
レス) id: 546d15b4fb (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - ずっと更新待ってます！！！！！！ (2022年2月28日 23時) (レス) @page22 id: 861da81337 (このIDを非表示/違反報告)
noel(プロフ) - ゆきなさん» 不定期作品に付き合っていただいてありがとうございます！これからもよろしくお願いします^_^ (2020年7月19日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - これからも無理せずに頑張ってください！楽しみにしてます！ (2020年7月19日 16時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
noel(プロフ) - 苑歌さん» ありがとうございます^_^ 今後も頑張ります！！ (2020年7月19日 15時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：noel | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/noel_2/
作成日時：2020年7月19日 12時
