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陸拾参 ページ15

体育館に入ると、破裂音とともに何か細かいものが襲いかかって来た。


一瞬身構えたが、鬼の気配も無ければ笑顔で俺の方を向いている少年少女。


Aの姿もあり、危険は無いと判断した。


「「兄貴!お誕生日おめでとう!!」」


「よもや!」


今日は俺の誕生日か!


どうりで色々もらった訳だ!


「え、兄貴忘れてたの!?」


「うむ!今し方思い出したぞ!ありがとう!」


いつもなら朝一にAが祝ってくれていたのだが。


「これ、俺達から!」


木兎少年が贈り物をくれた。


「これは……!」


「ほら、兄貴固まってんじゃん。」


「木兎に任せた俺らが間違いだった。」


「あんなの使う奴いねぇだろ。」


「悪い、兄貴。」


俺の手に握られていたのは、ふんどしと赤い腹巻。


「赤いふんどしは赤葦に止められた!」


「それだと還暦祝いになりますから。」


「ふんどしも止めろよ赤葦!」


「腹巻って、結局ジジくせぇ!」


「まぁまぁ。いかがですか、煉獄先生?」


部員達を宥めるAはとても楽しそうだ。


「嬉しい!最高の贈り物だ!」


「あ、いいんだ。」


「やっぱり木兎と思考回路似てるからな。」


「焔が大丈夫って言うから口出ししなかったけど。」


「兄貴が気に入るなら、俺もふんどしアリかも。」


素敵な贈り物に、彼らの気持ち。


これ以上の物はない!


「おめでとうございます。」


Aが黙っていたのも、この為だったのだな!


「A!お前にもあるんだぞー!」


「え?」


「昨日買いに行ったんだよ〜。」


「主に赤葦のチョイスだから安心しろ。」


爽やかな色の袋を受け取ったAはしばらくそれを見つめ、瞳を潤わせた。


「「いつもありがとう!」」


「ありがとうございます……。」


Aの笑顔は、綺麗な時ほど何かを堪えている。


今は涙。


「こういう時は泣いても良いんだぞ!」


Aは、人に合わせる事や、自分を押し殺す事を特技だと思っている節がある。


俺の言葉に、部員一人一人の顔を眺めた後、Aは静かに涙を流した。


「私、皆さんが大好きです。試合、必ず観に行きますね。」


「全部勝つからな!観てろよ!」


「はい!」


Aの顔が晴々としていて、彼女が決意した事に対して渋っていた自分が、少し情けなくなった。

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noel(プロフ) - みおさん» ありがとうございます!ゆっくりのペースですが完結まで頑張ります! (2022年3月21日 19時) (レス) id: 546d15b4fb (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - ずっと更新待ってます!!!!!! (2022年2月28日 23時) (レス) @page22 id: 861da81337 (このIDを非表示/違反報告)
noel(プロフ) - ゆきなさん» 不定期作品に付き合っていただいてありがとうございます!これからもよろしくお願いします^_^ (2020年7月19日 18時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - これからも無理せずに頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年7月19日 16時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
noel(プロフ) - 苑歌さん» ありがとうございます^_^ 今後も頑張ります!! (2020年7月19日 15時) (レス) id: fd0be5fd69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:noel | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/noel_2/  
作成日時:2020年7月19日 12時

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