無邪気、直感、自由【Ghost Face】 ページ15
ひら、と視界の端で何かがちらつく。
はっと顔を上げると、木陰からひょっこりと頭を出して、こちらにゆらゆらと手を振る男がいた。
「ハロー、A」
「...ハロー」
重苦しい雰囲気の儀式の場に不釣り合いな明るい挨拶に渋々反応を示せば、何やら満足気に二度頷いた彼が立ち上がり、こちらへ歩み寄る。
最早いつもの事なのだが、この全身黒ずくめの奇妙な男は、ある日を境に何故かマトモな儀式をやめ、執拗に私に文字通り張り付いて回っては、全員を取り逃がしている。
その上随分気楽なもので、歩き回る私の後ろを追いながら、どうにも掴みどころの無い話をペラペラと饒舌に語り、時に手を引いたかと思えば、途端に早鐘を打つ私の心臓など差し置いて、発電機へ誘導する。
気味の悪い亡霊の面で表情も窺えない故、余計に不気味極まりない。
今この瞬間も、配線を弄り回す私を飽きもせず見つめていて、「私に恋でもしているのかお前は」と揶揄いたくなる気持ちをぐっと抑えた。
腐っても殺人鬼として此処に呼ばれた男だ。機嫌を損ねれば最後、手に握られたナイフの刃は私の胸の中かもしれない。
...正直、最近はそんな心配をするのも馬鹿らしくなってきてはいるが。
多分、こいつは私が好きなんだと思う。多分。
しかし、こうも穴が開くほど熱い視線を浴び続けるのもいよいよ限界だ。
「ねぇ、他に行ったら？」
「...他？何が」
「私じゃなくて、他の人を」
「...僕に他所へ行けって？」
一瞬、ピクリと指先が硬直する。彼の声色は普段と変わらず、至極柔らかなものだったが、やはり少し怖い。だがここまで言って止めるのもまた怖い。
「私なんて見ても、何も面白くないでしょ」
「アハ、そういうこと。思った通り君って鈍感だな。それともわざと？」
「...はあ」
ケタケタと笑う彼の様子に薄ら寒さを感じると同時に、苛立ちを覚えた。この男は私を馬鹿にしているのか？
頭にきてしまって、ふいと彼から顔を背け、再び手元に視線を戻す。
鈍感？違う、確信が無かっただけ。そのくらい分かってた、貴方分かりやすい、仮面してるくせに。
心の中でぶつくさと不平を垂れながら、まるで進んでいない修理をがちゃがちゃと進めるが、尚も彼の視線は健在で、どうにも気が落ち着かない。
ふと、元々暗い視界が、濃い影に覆われた。
見上げない、見上げたら負ける。
「頭の弱い君の為にはっきり言ってあげようか。僕は君が好きなんだ」
耳元で聞かされた声に、溜息を吐いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 93人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Noel(プロフ) - レイ(元Night)さん» レイさんありがとうございます！！デススリ、大好きです……夢本当に少ないですよね…増やして…いきたい…！ (8月31日 1時) (
レス) id: ab5bbb1140 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(元Night)(プロフ) - めっちゃ好きです、デススリなかなかないのでありがとうございます、最高です。。 (8月30日 23時) (レス) id: 2a5a7e1b4d (このIDを非表示/違反報告)
Noel(プロフ) - 月神さん» コメント欄ではご遠慮お願いします〜 Twitterなどその他SNSやボードへの書き込みでしたら全然お聞きしますよ！ (8月10日 7時) (レス) id: ab5bbb1140 (このIDを非表示/違反報告)
月神 - うちのdbdのオリ（プレイヤー？）について聞いてもらえませんか？ (8月10日 1時) (レス) id: d36a24f29e (このIDを非表示/違反報告)
Noel(プロフ) - 月神さん» 素敵ですね！悪辣セーターおじさん私も一時期ハマってました！遭遇率が低いのだけ寂しいですが… (7月24日 20時) (レス) id: ab5bbb1140 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Noel | 作成日時：2018年12月16日 17時
