・ ページ18
・
それは、本当に突然だった。
永遠に続くと思っていた幸せな日々は、
呆気なく崩れ落ちた。
あの時、母さんは昼飯の支度をしていて、俺は一人で畑にいた。
畑まで届いたカレーの匂いを嗅いで、俺は家に向かった。
玄関先に、見知らぬスーツの男が数人いた。
この島ではスーツを着る人なんていないから、その光景は異様だった。
家の中から母さんが男に連れられて出てくる。
全身を得体の知れない不安が包んだ。
「母さん?」
声をかけると、母さんはゆっくり振り返り、
俺を見て涙を流した。
初めて見る、母さんの涙だった。
「君が、飛貴くんだね?」
別の男に聞かれたが、耳にも入らなかった。
いつの間にか停められていた黒いバンに、母さんが乗せられていた。
駆け出そうとする俺を男が引き留めた。
「離せ!母さん!母さん!!」
何がなんだか分からなかった。
「飛貴くん、君は騙されてるんだ!」
分からない、分からない、分からない、
でも、
「母さんが泣いてんだよ!」
それだけは事実だ。
母さんの涙を拭いてあげなきゃ。
ただ、それだけを考えていた。
.
229人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
呑(プロフ) - Athenaさん» Athenaさん、ありがとうございます!このお話は配役も展開も思い付きの行き当たりばったりで書いているのですが、褒めて頂けるのなら良かったです。更新頑張ります! (2020年6月4日 5時) (レス) id: 2d1b1a1819 (このIDを非表示/違反報告)
Athena(プロフ) - 呑さんのお話いつも楽しみにして読ませて頂いてます!人物の配役といい、話の展開といい目が離せません! (2020年6月4日 1時) (レス) id: dbbbb4e0c8 (このIDを非表示/違反報告)
呑(プロフ) - クラゲさん» クラゲさん、ありがとうございます。ただの欲望の落書きなので、ご期待頂くようなものではありませんが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。モチベーションになります。 (2020年3月29日 22時) (レス) id: 01d1287c7a (このIDを非表示/違反報告)
クラゲ(プロフ) - コメント失礼致します。はじめまして。何回も評価ボタンを押したいほど好きです!更新楽しみにしています!もっとたくさんの人にこの作品を知って欲しいと思います。他の作品も読んでみます! (2020年3月29日 11時) (レス) id: c5ec0b2059 (このIDを非表示/違反報告)
呑(プロフ) - れさん» れさん、後れ馳せながら、コメントありがとうございます。励みになります。見切り発車ですがゆっくり頑張ろうと思うのでお手透きの折にぜひ。 (2020年3月21日 14時) (レス) id: 01d1287c7a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:呑 | 作成日時:2019年12月21日 2時