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・Yuto
「那須はさ、家で1人でいると寂しくなる?」
相変わらず、前の席に後ろ向きに座る浮所がそう尋ねた。
「いや、全く。」
ペンを置いてノートを閉じて浮所の話に耳を傾けた。
浮所がこの手の話を振るときは、決まって聞いてほしい話がある時だ。
「俺、昨日久々に家に帰ってさ、死ぬほど寂しかった。」
浮所は安易な共感など求めていないだろうから、相槌で返す。
「家には親も弟もいるのに、圧倒的に孤独を感じたんだよ。」
その感覚は俺にもわかる。
孤独とは、一人でいる時ではなく、誰かといるときにこそ感じるものではないかと。
「帰りたくなった?」
傷つけないように、出来る限りの穏やかな声色で言う。
浮所はいつも笑ってるが、傷つきやすい。
繊細な浮所にこの手の話はしない方が無難なのだけれど、今は踏み込むべきだ。
「そうだね」
浮所は弱った笑顔をみせた。
「もう、帰る場所なんてないのにな、」
「でも、浮所の帰る場所を作った人は今もどこかにいる。生きてるんだから。」
そう、死んでいない人はどこかにいる。
だから。
「会いに行ってもいいんじゃないかな」
浮所の瞳が揺れた。
その瞳には、もう俺は映っていない。
映っているのは、その人と過ごした場所だった。
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呑(プロフ) - Athenaさん» Athenaさん、ありがとうございます!このお話は配役も展開も思い付きの行き当たりばったりで書いているのですが、褒めて頂けるのなら良かったです。更新頑張ります! (2020年6月4日 5時) (レス) id: 2d1b1a1819 (このIDを非表示/違反報告)
Athena(プロフ) - 呑さんのお話いつも楽しみにして読ませて頂いてます!人物の配役といい、話の展開といい目が離せません! (2020年6月4日 1時) (レス) id: dbbbb4e0c8 (このIDを非表示/違反報告)
呑(プロフ) - クラゲさん» クラゲさん、ありがとうございます。ただの欲望の落書きなので、ご期待頂くようなものではありませんが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。モチベーションになります。 (2020年3月29日 22時) (レス) id: 01d1287c7a (このIDを非表示/違反報告)
クラゲ(プロフ) - コメント失礼致します。はじめまして。何回も評価ボタンを押したいほど好きです!更新楽しみにしています!もっとたくさんの人にこの作品を知って欲しいと思います。他の作品も読んでみます! (2020年3月29日 11時) (レス) id: c5ec0b2059 (このIDを非表示/違反報告)
呑(プロフ) - れさん» れさん、後れ馳せながら、コメントありがとうございます。励みになります。見切り発車ですがゆっくり頑張ろうと思うのでお手透きの折にぜひ。 (2020年3月21日 14時) (レス) id: 01d1287c7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:呑 | 作成日時:2019年12月21日 2時