深紅の物語 (ページ28)

今日:22 hit、昨日:14 hit、合計:2,695 hit

ーページ28

「あなたの魔力量では、これを止めるのは不可能…。しかも、私でさえ勝てませんよ。」

確かに、シールドの魔法の所有者は、莫大な魔力が必要だ。

「今の俺なら、勝てない。」

謎の発言をした彼は、余裕そのものである。

刹那、ナイフが弾かれる。

ナイフは、ゆっくりと落下し、カランという乾いた音を立てて床に叩きつけられる。

「形成逆転ですね。」

コウ・クルススは、ミス・マナンティアレの発言に全く動じない。

「余裕ぶっていられるのも、今のうちですよ！」

ミス・マナンティアレが指差す先には、蔦でぐるぐる巻きにされたイース・リヴェルタがいた。

「よくやったわ、サマーウィズ。」

フリルを付けたドレスを身にまとった少女、サマーウィズはひたいにブイの字のピースを掲げる。

「おまかせあれ！」

イース・リヴェルタは、苦しそうにもがく。

息は荒く、まともに呼吸すらできていない。

コウ・クルススがみたように、やはり微熱が続いたおかげで、蔦さえ切る魔力も失ったらしかった。

その時コウ・クルススの首に、ナイフが当てられる。

「そろそろ、終わりにしましょうかね、コウ・クルスス。」

コウ・クルススは、叫びさえしない。

なんともやりにくく、ミス・マナンティアレは、ナイフを持つ手に力を込めることができなかった。

その間に、コウ・クルススは呪文のように、何かを言う。

「封印解除。」

コウ・クルススがイース・リヴェルタの蔦を解除しようとしていると思ったのか、ミス・マナンティアレは微笑む。

「無駄です。封印解除は、シールドの…。」

直後、ミス・マナンティアレの目は大きく見開かれた。

コウ・クルススの魔力量が、格段に上がっていることをミス・マナンティアレが感じたからだ。

「な…！！！！！」

その魔力量は、イース・リヴェルタをはるかに超える。

一瞬で、ミス・マナンティアレは勝ち目がないことを悟った。

「まさか、魔力を隠し持っていたとは…。驚きました。」

もうそこには、今までの余裕などない。

「今の俺と戦いたいか。」

コウ・クルススはあくまで冷静に問う。

「…負けました。私の負けです…。」

ミス・マナンティアレは静かにこうべを垂れる。

零の顔がこわばる。