エルキュールの探偵編6 ページ47
トマトのほのかな冷たさが、手のひらに染み込んでくる。
軽快なBGMが耳元で空回りして、口がぱくぱくと動いた。
「そ、それ……ど、どういう…」
「Aさんのことが好きです。僕の恋人になってくれたらいいな、と思いまして」
「しょ、正気ですか？」
「正気ですよ。何ですか、その質問」
おかしな人だなぁ、とくすくす笑いだす安室さん。いやおかしいのは貴方だよ。
「あ、あの、ここ、スーパーなんですけど……」
「そうですね」
そうですね！！？
分からない。この人が全く分からない。何かの冗談のつもりなの？ また？ いい加減にしてほしい。毎回毎回、ちょっとトキメイてがっかりする、私の気持ちも考えてほしい。
「そういう冗談、好きじゃないっていいましたよね？」
「冗談のつもりじゃないんですが」
「うそ」
「本当ですよ」
トマトをカゴに入れ、「買い忘れたもの、ないかな」と呟く安室さん。本当に何を考えてるんだろ。
「安室さん、私、自分のご飯買ってきますね。そういう冗談は、もうちょっと美人な人に言った方がいいですよ」
「だから冗談じゃないんですけど……」
安室さんの反論を無視して、私は自分のカゴにカップラーメンをぽんぽん放り込んでいく。
ばかばかばか。安室さんのばか。
付き合ってください、という安室さんの優しい声音が、ぐるぐると頭の中でうずまいた。
男の子に告白されたのなんて、いつぶりだろう？ 中学生の時に、一人だけ付き合っていた同級生の男の子がいた。だけどもその時だって、別にちゃんと「好きです」とか言われたわけじゃなくて。友達の延長みたいな感じで。だからこんなことは、本当に初めてのことで。
「あの、Aさん」
安室さんの声が背後から聞こえる。足音がして、私の後ろを歩いている。
「本当に冗談なんかじゃありませんよ」
そんなわけない。安室さんみたいな完璧な人が、どうして私なんかを好きになったりするだろう。何か絶対訳がある。
しきりに後ろから、本気です、と言い募ってくる安室さんに、しまいには私は半泣きになってきっと振り向いた。
「安室さんのばか！ いくらわたしだって、こんな嘘には騙されませんよ。
わ、わたしだって、いちおう女の子なんですよ。傷つくんです。そういう嘘は」
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0 - ここのスコッチと言うかヒロがどちらかというか松田っぽい気がする… (2022年6月11日 4時) (
レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
かなえ - 沖矢さんが東京を知らない描写がありますが、米花町は東京都にある設定ですよ？ (2020年5月17日 15時) (レス) id: 3ecbb3d6aa (このIDを非表示/違反報告)
さち - 好きです。おもしろいです。よろしくお願いします。 (2019年10月23日 15時) (レス) id: 5f335610e5 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - ミツキmitsukiさん» ありがとうございます！！ 降谷さんかっこいいです (2018年4月22日 20時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
ミツキmitsuki(プロフ) - とっても作品、おもしろいです！あと、わたしも安室さんより降谷さん派です！かっこいいですよね！！ (2018年4月22日 10時) (レス) id: 3d854cbce7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2018年4月5日 19時
