エルキュールの探偵編5 ページ46
「このキャベツなんかどうですか？ 美味しそうですよっ」
「あ、確かに。形も綺麗ですね。こっちにしましょうか」
安室さんが、私が選んだキャベツをスーパーのカゴに入れる。
今度、女性向けの低カロリーサラダ定食を新メニューとして作るらしいのだが、それの買い出しだという。
「安室さんって……なんていうかマメですよね」
「そうですか？」
首をかしげつつ、安室さんが「あっ、この茄子もなかなか美味しそうですねえ」なんて言って笑いかけてくるものだから、不覚にも可愛いなんて、ちょっと思ってしまった。
「そういえば、この前、Aさんが頭をポンポンしてくれたおかげで、なんだか疲れがとれた気がするんですよ。不思議ですね」
それは当然だよ。あんな大量の悪霊に取り憑かれていたんだから。
私ははぁ、とため息をつく。
「ダメですよ、無茶したら。何があったのかは知りませんけど」
「どういう意味です？」
「とぼけないでくださいよ。まあ、安室さんは探偵だから、色々危険な任務とかもあるのかも知れないですけど」
私の言葉に、安室さんは一瞬目をぱちくりとして、それからふっと笑った。
「優しいんですね」
「……安室さんが優しくしてくれるから」
真実だった。
私は別に、特別優しくもないし、人徳のある人間というわけでもない。でも安室さんは私のことを助けてくれた。よく分からないし、意地悪なことを言うときもあるけど、根は優しい人だと思うから、その気持ちには答えたいと思うだけだ。
それに、スコッチさんのこともある。
親友なんだ、とぽつりとこぼしたスコッチさんの悲しげな声が、蘇ってくる。
助けてくれ、って言ってた。安室さんのことを、助けてやってくれって。
それは、私にしかできないとも。
「それはAさんが優しいからですよ」
「じゃあ、お互い様ってことですね」
「そうですね。あ、そこのトマト取ってくれます？ 形のいいヤツを選んでくださいね」
安室さんに言われたので、私は出来るだけ形が綺麗で色が瑞々しいものを選んで、安室さんに差し出す。
「これはどうですか？」
私が差し出したトマトを受け取り、にっこりと笑う安室さん。
「いいですね、ありがとうございます。
あ、Aさん。付き合ってください」
「ええ、はい。…………は？」
「僕と付き合ってください、Aさん」
トマトをお互い握り合ったまま、まじまじと見つめ合う。場違いなスーパーの音楽が、二人の沈黙を埋めていた。
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0 - ここのスコッチと言うかヒロがどちらかというか松田っぽい気がする… (2022年6月11日 4時) (
レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
かなえ - 沖矢さんが東京を知らない描写がありますが、米花町は東京都にある設定ですよ？ (2020年5月17日 15時) (レス) id: 3ecbb3d6aa (このIDを非表示/違反報告)
さち - 好きです。おもしろいです。よろしくお願いします。 (2019年10月23日 15時) (レス) id: 5f335610e5 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - ミツキmitsukiさん» ありがとうございます！！ 降谷さんかっこいいです (2018年4月22日 20時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
ミツキmitsuki(プロフ) - とっても作品、おもしろいです！あと、わたしも安室さんより降谷さん派です！かっこいいですよね！！ (2018年4月22日 10時) (レス) id: 3d854cbce7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2018年4月5日 19時
