スカーレットの邂逅編4 ページ5
困惑顔の私をよそに、ぶつぶついう幽霊。
「その人、随分お人好しなんだ」
『そうなんだよ。まあそんなこと言ったら、きっとあいつは怒るだろうけどな……
まあ、なんだ! とにかく、そいつを助けてやってほしいんだ! 頼むよお嬢ちゃん』
助けてやってほしいって言われたって……顔も名前も知らない人を、どう助けろというのだろう。
第一、目の前の幽霊の風貌はどうみても二十代後半から三十代。ということは、この幽霊が言う「あいつ」って人も、それくらいの年代って可能性は高い。
私みたいな小娘に、何かできるとは思えないけどな。
「具体的にどうすればいいわけ?
名前も何もわからないし、そもそも手助けたって……」
『それに関しては何も心配いらない』
「はっ?」
いやいや、心配とかではなくてですね。
そう反論しかけたのに、幽霊は無視してべらべら喋りはじめる。
『俺の言うとおりにしてくれたらいいんだ。
向こうに住む場所もちゃーんと見つけておいてやったし。心配ねえよ』
「はっ!? 向こう!?」
何の話だ?
人助けの話じゃなかったのか?
「向こうってなに」
『行ってみたら分かると思うぜ。ま、お楽しみってことで』
相変わらずおちゃらけた雰囲気はそのままで、幽霊は私の部屋をぐるっと見回した。
大学生になって、一人暮らしをするために借りたワンルームの小さなアパートだ。
『ま、ここよりはいい暮らしができるぜ。保証するよ』
そんな保証嬉しくも何ともない。
「ねえ、分かってる? 私、いちおう学生だからね。成仏できるようにはしてあげるけど、毎回手伝えるわけじゃないから」
『おう。出来ることからやってくれよ』
ホントに分かってるのかなぁ。
にこにこと満足げな幽霊を見て、不安が募る。
まあでもいいや。
明日は早いし、もう寝よう。
そう思って布団に入り直した時、
『おおっ!!』
「まだいたんだ……」
『これって、スコッチじゃねえか』
幽霊の男が、嬉しそうに机に置かれた酒瓶を見つめている。
「ああ……それはね、お父さんのだよ。明日、進級祝いに実家に持っていくの」
『へええ……親父さん、スコッチが好きなのか?』
「うん。まあね」
どこか懐かしそうに、そして幾分悲しそうな顔で幽霊がスコッチをじっと見つめている。
そっと胸のポケットに手を当てた。
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0 - ここのスコッチと言うかヒロがどちらかというか松田っぽい気がする… (2022年6月11日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)
かなえ - 沖矢さんが東京を知らない描写がありますが、米花町は東京都にある設定ですよ? (2020年5月17日 15時) (レス) id: 3ecbb3d6aa (このIDを非表示/違反報告)
さち - 好きです。おもしろいです。よろしくお願いします。 (2019年10月23日 15時) (レス) id: 5f335610e5 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - ミツキmitsukiさん» ありがとうございます!! 降谷さんかっこいいです (2018年4月22日 20時) (レス) id: 5a53eb76ac (このIDを非表示/違反報告)
ミツキmitsuki(プロフ) - とっても作品、おもしろいです!あと、わたしも安室さんより降谷さん派です!かっこいいですよね!! (2018年4月22日 10時) (レス) id: 3d854cbce7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2018年4月5日 19時